生まれつきの使命 パワーストーンの中へ あなたの悪魔を取り込めます。

2018.10.06 Saturday 21:41
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    JUGEMテーマ:こころ

    JUGEMテーマ:残りの時間

     

     真夏 薄暗い照明の下、蚊取り線香の煙が 理保子を包み込んでいる。

    この蚊取り線香なんか邪魔だ!と思い、理保子は蚊取り線香の位置をずらした。

     

     蚊取り線香の煙は、理保子の思いとは裏腹に

    まるで 理保子をからかっているように、

    理保子に向かって 蚊取り線香の煙は 理保子を包み込むように

    襲って来ていた。

     

     扇風機の風が 理保子の髪を浮かせて おでこが冷たくなるほど

    回っている。

     テーブル越しの窓側にある扇風機の向きを変える気力もなく、

    蚊取り線香の煙に包まれて 煙の行方をみながら 少し体を上にずらして見た。

     体をずらしても 蚊取り線香の煙は ずらした所に 向かってくる。

    (どうして 今日は こんなに 煙が向かってくるのだろう)

     

     蚊取り線香との戦いは 半ば諦めた。

    もう良いや。この煙の中にいるしかない。

     

     テーブルの上に置かれたある真っ赤なスイカを 見つめた。

    別に 特別なスイカではない。

    おじいちゃんの従兄弟にあたるおじさんの家で採れた外側に傷がついて売りに出せないスイカ。

    味は 格別。

    私は いつも このおじさんのスイカを 楽しみにしている。

     

     さっき、おばちゃんが 自分の分を 「食べなさい」と置いてくれた美味しそうなスイカ。

    理保子は いつも おばあちゃんから優しくしてもらっているのに、

    何も してあげられない自分が 悔しかった。

    (私は どうすれば おばあちゃんを 助けてあげられるのだろう)

    このスイカを 私が食べると、おばあちゃんが喜ぶのか、食べなければ

    おばあちゃんに 食べさせてあげるのかもしれない。

     

     おばあちゃんは42歳。元気でいつも優しい。怒ったりしない。

    理保子は おばあちゃんが 大好きだった。

     

     さっき おじいちゃんが 「お前の事が好きな奴のスイカ」と

    ボソッと独り言のように おばあちゃんに向かってつぶやいた。

    おばあちゃんは 可愛い顔になり 頬を紅く染めていた。

     

     ( あれは どういう意味なんだろう)

     

     いつも シャキシャキ働いているおばあちゃんが、

    どうしてあんな・・・・・・しおらしい顔になったんだろう。

     

     14歳になったばかりの理保子は、

    その意味を感じとった自分の気持ちに混乱した。

    頭の中に過っている源氏物語的な想像は打ち消そう。

    でも、ロマンがあって良い。

    恋物語を想像してワクワクしては、また現実に目をやる方が無難だと消し去り

    ながらも、秘めた恋心を抑えて何もなかったように、

    炊事場に立っているおばあちゃんの背中の淋しさがひしひしと伝わってきた。

     

     スズムシの鳴き声が聞こえている。

    今のは 虫の声でと一緒に 聞こえなければよかったのに。

    理保子は 思わず 自分の耳を塞いだ。

    スズムシの鳴き声も おじいちゃんの言った言葉も 

    おばあちゃんの恥ずかしそうな顔も消えはしない。

     

     夏休み読んだ「野菊の墓」の文章が頭の中で

    メロディのように浮かんだ来た。

     

     お見合い結婚って 儚い。

    おばあちゃん・・・・・・かわいそうに 。

    好きな人と結婚できないって かわいそうに。

     

     虫の声を聞きながら、いつの間にかウトウトとし、理保子は 不思議な夢を見た。

    高貴な着物を装っている女の神様が、2人のお供を連れていた。

    何の用事かと、理保子はその様子を、恐々とじっと見ていた。

     

     すると、突然 その高貴な服を着た女性が 理保子に向かって鏡を向けた。

    丸い手鏡よりも少し大きめの鏡で、どこかで見たことがある鏡だなぁ〜と、

    理保子はのんびり その様子を眺めていた。

    あれは天照大神の神社に祀られている鏡に似ているけど、

    あの鏡を 一体どうするのか ぼんやりと目をやった。

     

     すると、突然 その高貴な女性は、イナズマが走ったような 

    目を開けていられないくらい 眩しい光を理保子の顔に向けてた。

     

     理保子は 眩しさで目を閉じたけれど、 光の残像だけが 残って

    他には何も見えなくなった。

    暗い闇の中に イナズマのような光だけしか見えないことで 理保子を不安にさせた。

     

     もう、目が 見えなくなったかもしれないと不安になり、

    「誰か助けて!」と心の中で叫んだ。

     

     貴方は誰?と高貴な服を着た女性の方へ目をやると、

    高貴な女性は2人のお供に 何か言って3人とも 理保子の前から 姿を消した。

     

     朝起きてみると、自分の目の前には、いつもと変わらない部屋の天井が見え、

    いつも使っている自分の布団を握りしめ

    助かったと安堵した。

     

     窓の外には 朝陽がしらじらと照らしている 明るい空が見えた。

    (さっきのは夢なの?夢にしては生々しい)

     

     理保子の家の上には 女神 天照大御神が祀られている神社がある。

    理保子は その神社でよく遊び、時々 天照大神の鏡に向かって話しかけていた。

     

     そこに 女の偉い神様がいるのだと おばあちゃんが 教えてくれたから、

    理保子は何かあると、その鏡に向かって 「私はどうすれば良いのですか?」と

    答えてはくれない鏡に向かって 自分の未来が 鏡に映し出されないものかと

    興味深々というよりは すがる気持ちで 鏡を見つめていた。

     

     理保子は思いっきり布団を持ち上げ バサッとたたみ込んで、

    理保子の上にある神社の階段を 思いっきり上がった。

    神社の階段は 30段あるが、理保子は とにかく 駆け上がりたかった。

     

     「そこへ行って 確認しなければ。あそこへ行って答えを聞かなければ きっと見つかるはず」

    そう心の中で 強く願いながら 、所々欠けている石段を踏み外さないように、

    勢いよく駆け上がった。

     

     朝陽が キラキラと木々の間から、理保子を待っていたかのように

    導いてくれていた。

    朝露に濡れた草花が キラキラと輝いている。

    赤とんぼが 理保子の周りを 「こっちへおいでよ」というように

    優しく見守ってくれるように 飛んでいる。

     

     「一緒に ついて来てね」

    理保子は そう 赤とんぼ達の群に向かって 呟いた。

     

     神社への石段は コケで滑りやすい所や石が欠けて壊れている所もある。

    下を見ながらでは無いと、こけてしまう。

     

     幼い頃から登って慣れている階段ではあるけれど、

    やや用心深く 足に力を入れて 一気に登った行った。

    秋が訪れようとしているのか、

    静かな風が囁くように 理保子の髪をなぎかせてくれた。

     

     途中 お墓があるところには、赤い曼珠沙華の花が沢山咲いている、

     

    曼珠沙華は 殺虫能力を持つほど 毒性が強い。

    だから、墓地の周りに 咲かせている。

     

     ここにあるのは 無縁仏のお墓だから。誰も手入れにこない。

    だから、曼珠沙華から 守られている。

     

     曼珠沙華の花道を通り過ぎ、神社の前にたどり着いた。

    いつかおばあちゃんがくれたピンク色のパワーストーンが重く感じた。

     

     これをはめていれば、何かわかるかもしれない。

    おばあちゃんがいつか仏壇の前で言っていたから。

     

    理保子は、おばあちゃんから、「これは梨穂子の守り神だから大切にしなさいね」

    と渡された時、邪魔だから外したいと言ったら、

    「これは、あなたの身代わりなのよ。これをつけていれば悪い方へいかないように教えてくれるの」

    「石が喋るの?」

    そう聞いてみると

    「石は喋らない。でも、梨穂子へちゃんと伝えてくれるのよ。心の中に邪気がなく素直ならね」

    「邪気がなくってって何?」

    「人は誰がどうしたとか、そんなことばかり言って僻むでしょ。人は人なのよ。

     自分を信じて自分の心に耳を傾けなさい。梨穂子の守護霊はきっと守ってくれるから」

    「じゃあ〜、守護霊に聞けば良いじゃない」

    「守護霊は梨穂子の運命を導いてくれる神様だよ。その石は梨穂子を守ってくれる身代わりの神ね」

    「これ 神様なんだ」

    「神は己であり、神は祖先であり、大切にしなければならないのは生き人神」

    「生き人神?」

    「そう。巡り合った人はなんらかの理由で、あなたに会いにくるのよ。意味があるのよ」

    「神様なんているの?」

    「神はいるのよ。ずっと、昔から。梨穂子のそばにね」

    「じゃあ〜、美味しいものを食べたいってお願いしたら聞いてくれるの?」

    「そんなお願いは聞きません。もっと、大切なものを導いてくれるから」

    「意地悪な人も、悪いことをする人も、怖い人もみんな同じ人間だから、仲間なのよ」

    「仲間と石となんの関係もないよ」

    「あるわよ。人は一人では生きて行けないんだから、人の声に耳を傾けなさい」

    「でも、身がてな人もいる。ヒステリーな人が起こっていると嫌になる」

    「ウフフッ・・・・・・確かにそうね。でも苦手な人もみんな同じ人間なんだから、仲間なのよ」

    「それにしても石は?石は何をしてくれるんだっけ?」

    「理保子が悪い悪魔の誘いから導かれようとしたら助けてくれるのよ」

    「どうやって?」

    「それより、まず、これを信じてあなたの魂を入れておきなさい」

    「どうやって?私が死んでこの中に入るの?」

    「いいえ、毎日、ご先祖様にお祈りをするのです。ご先祖様は貴方をここへ生まれ変わらせて送ってくれた有難い守り神だから」

    「私ご先祖様にあったことないよ」

    「じゃあ、毎日手と手を合わせて 合唱。手のひらの中は膨らませて良いパワーを包み込むようにね」

    「真ん中を膨らませたら、そこに小判が出てきたりして」

    「あらあら、それもいいわね。ワハハハッ😊😊」

    仏壇の前で、ふざけすぎたと反省した、これだとバチが当たりそうだ。

    真面目に 無になって 合唱

     

    「右手が先祖様 あなたが生まれる前に見た世界があったところかもしれない。

     そして真ん中が現世。左手が未来。全て調和されるように祈りなさい」

     

    ばあちゃんは そう言って リンを鳴らした。

    部屋中 お香の香りと ばあちゃんの厳かな神への祈りが シィ〜んと部屋中の空気を変えた。

     

    あの日以来、このパワーストーンは 梨穂子の守り神になってくれた気がしていた。

     

    ピンク入りのパワーストンは これから 梨穂子にどんな運命をもたらし、それをこのパワーストーンと乗り越えて行くのだろうか。

     

         🔷

     

     コメントとして  

     

    今回このようなテーマを書こうと思ったきっかけは、

    三宅島へ住んでみて まだ 人と神は近い存在にあるということを実感したからです。

     

    三宅島の自然と人情が 私に 伝えてくれました。

     

    人は 一人ではない。

    この世に神などいない。

    そうかもしれない。

    ただ それは 自然もない 5感も必要がない 感情も愛情も すぐに伝えることができる

    待つこともない。時を楽しむことがない。 人を見守ることもない。

    機械と電気の暮らしの中だけのことであって 未だに この世には

    神と守護霊が 私たちを 守ってくれている気がする。

     

    人間の本能が薄れる前に 人間の本能を導いて生きたい。

    一人暮らしで困っている人 病気を抱えながら 生活に困っている人

    騙されて 急激な運命の転落を味わった人

    私は 何かをしてあげたい。

    私に できることはないのだろうか。

    苦痛を軽減させてあげる手段は ないものだろうか。

    人の痛みを 自分の痛みとして 捉えてしまう。

    これは 私のどうしようもない性。

     

     そんな時、いつか 何人かの魂から頼られて それを自分の体を身代わりに

    パワーを送ったら、その人たちは、ほんの終日生き返り 家族に深く感謝の気持ちを述べ、

    家族とともに 家族に見守られながら なくなりました。

    私は 後悔しない死を導く 力を神からもらっています。

     

     でも あまり使いすぎると 自分の体力が なくなって行くのを 自分で感じる。

    助けてあげたい。 

    もっと 穏やかな看取りを させてあげたい。

    本人の意思を尊重させてあげたい。

    このことから、

    「 誰か 私に 力をください」

    と思うようになり、昔 子供の頃 おばあちゃんからもらった お授受を思い出しました。

     

    どんな エピソードが出てくるか 楽しみにしてください。

     

    今は まだ 三宅島にいるにいるので、個人保護法の法律の関係から、

    後数年経ってから 書き記します。

     

     

     いつか どこかで あなたの前に 私が現れたなら、

    何かを 伝えにやってきたと 思ってください。

     

    「私は 人が好きです」

     

    努力して 一生懸命生きている人の 力になります。

    みんな  一人じゃない。

     

    私が あなたのそばにいるから。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    想像してごらん

    2018.09.14 Friday 21:31
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      綾は きっと 僕のことなんて 好きだなんて 思っていないかもしれない。

      綾は 多分  僕のことなんて 特別な人だなんて 思っていないかもしれない。

       

      だけどね。

      綾は きっと 僕のことを 好きになると思うんだ。

      綾は 多分  僕のことを ずっと一緒に居たいと思う気がする。

      なぜだか そう思える。

      僕といる綾は 楽しそうだから。

      なんとなく だけど・・・・・・そう思う。

       

      僕は 明日 綾を 食事に誘おうと思う。

      僕は 明日 綾から 振られるかもしれない。

      僕は 明日 傷ついて  喪失感に襲われるかもしれない。

      僕は 明日 幸福を手に入れるかもしれない。

       

      運がどちらに傾くか 不安になる。

      振られる自分を想像するからだと思う。

       

      だったら 笑っている僕達を 想像しよう。

       

      好きだと言うには 恥ずかしいけど

      好きだと言えない 意気地なしの自分は もっと 恥ずかしい弱虫だと思う。

       

      その気が無くても 告白すると 意識して

      告白してくれた人が気になり始めるらしい。

       

      そう言う作戦もありだな。

       

      言わなくて後悔するより 

      伝えなくっちゃって思うよ。

       

      同じ時間を過ごしたいから、

      ゆっくり さりげなく 思いを伝えていこうかな。

       

      カレンダーの予定に

      僕の誕生日が 特別な日になる日まで、

      綾が心配だから 見守っていたい。

       

      綾が 泣かないように

      そばにいたい。

       

      そうすれば

      綾は きっと 僕の名前を なんども呼んでくれるから 

       

      そこから 始まる 恋もあるからね。

       

      綾が 好きになってくれるような男でいることが

      大切なのかもしれないね。

       

       

       

       

      辛いって言えないのが、ツラいよな。  最終章  20 永遠の重さ

      2018.09.04 Tuesday 13:20
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         最終章 18続編   永遠の重さ

         

         早川邸に、八重桜が咲く5月、訪問看護ステーションの3周年記念の食事会が行われた。

        早川君のお母さんは、今日ね、今日ねと嬉しそうに連呼している。

         

         金曜日の夜、舞達が結婚式を挙げた相模原に、1軒しかない結婚場で。

        大きなレストランは、そこしかないからだった。

         

         私は、今日婚約発表をすることに、些か、気が引けていた。

        ここは、職場であり、管理者である、立花 彩香の立場であり、

        早川邸へ嫁ぐ 立花 彩香ではない。

        仕事とプライベートは、分けたい性格なのに・・・・・・。

         

         でも、早川君のお母さんは、すっかり乗る気になっていて、自分のお洋服選びもしている。

        訪問看護ステーションは、早川病院の傘下になり、また、長い歴史の中で、

        地域と深い繋がりがある夫人の参加を、断るわけにはいかない。

         

        早川院長も、今日は出席される。

         私は、白いスーツにした。早川君が言うのかどうかの確認はしていない。

        タイミングを逃してくれる事を祈った。

        でも、一応、どちらに転んでも恥じないようにしておこう。

         

         2時間の予約だから、まったり過ごせば、みんなお酒を呑んで、この話は流されるかもしれない。

        早川院長は、元々無口な人なので、挨拶はすぐに終わり、私の挨拶は、長く時間を費やして語った。

        とにかく、時間を稼ごう。早川先生の挨拶は、残念なことに、多くを語らない人なので、短かった。

         私は、早川君のお母さんと目が合わないように、スタッフと一緒に挨拶回りをしていた。

        「あら、綾さん!ちょっと、さっき飾ってあったピンクのウエディングドレスがいいわよねぇ」

        ・・・・・・出たっ!もう、逃げられない。

        お母さん、ここは仕事の一環ですから、お静かにお願いしますと、言いたいのを我慢した。

        私は、顔を引きつらせて、笑いながら、目線を反らした。

         

         どうしよう。早川君は何処にいるんだろう。助けてよ。どうしよう。

        早川君を来客の中に埋もれているのを発見した。

        「お母さん、今度ゆっくり見にきましょう」

        と言って、その場を去った。

         早川君と目線が合うように、ジワジワと来客の中に、紛れ込んでいった。

        あまりお世話になってもいない顔と名前が一致しない人に、挨拶をしながら、

        気づいてくれるのを待った。

         やっと、早川君と目があった。私の顔は、困り果てている顔をしているはず。

        私は、思っている事が、なんでも顔にです。

        「綾、今日はやめろう。ここは、私用の場ではないから」

        助かった。

        「ありがとうございます」

        「お母さんには、僕から説明しておくから」

        「助かりました」

        良かったぁ〜と、ホット胸をなでおろし、食事を頂いた。

        2時間の食事会は終わり、スタッフは先に帰ったが、私は残って、来客の方の見送りをした。

         

         早川家の人も同じように、見送りをしていた。

        お酒を呑んでいないのは、私だけだったので、私の車で早川邸まで送ることになった。

         

         2階のレストランからは、海が見え、教会がる。

        顔馴染みの店員が、「さっきのウエディングドレス見ていきますか?」

        まさか、そんな事を、お母さんに聞くなんて。

        「あら、良いの?こんな時間に、ごめんなさいね」

        ・・・・・・やっぱり。

         

         早川院長は、ソファにどっしり座って、眠っていた。

        私と早川君は、1階にあるドレスが並んでいる試着室へ連れていかれた。

        今日、婚約は発表をする予定だったけど、中止となり、早川君のお母さんに悪かったと、

        反省もあった。

         

         ウエディングドレスは、白だけかと思ったら、グリーンやおインク、ブルー、パープルもある。

        この歳で、フリフリは不釣り合いな気がして、シンプルな物を探した。

         

         見ているうちに、ドレスも綺麗なんだと思えてきた。

        私には、縁の無いと思っていたウエディングドレス。

        この華やかな装いを、身に纏える日がくるなんて。素敵。

        「結婚式は、いつ頃のご予定ですか?」

        「そんなのまだ、決まってないから」

        私は、よく知っている店員にの言葉をシャットした。

        「綾さん、これが良いんじゃ無いの?」

        お母さん!私の言葉聞いていなかったんですか。全く・・・・・・。

        早川君のお母さんは、ピンクのフリフリのレースが付いたドレスを、

        店員に言って、店員はそのドレスに手を伸ばしている。

        「それは若すぎます。この白い裾だけにレースがある方が好きです」

        「そう?それが好きなの?だったら、それを取ってくださる?」

        店員は、私が選んだドレスに手を伸ばし、ドレスを早川君のお母さんに手渡した。

        早川君のお母さんは、ドレスを私に当てて、

        「あら、似合うわねぇ。素敵よ。えぇ、これが良いわ」

        「似合うかどうか」

        私は、恥ずかしくて、照れ臭くさくなったからか、結婚式という最終判断を誤魔化そうとしたのか、

        薄笑いをして、ドレスを抱えるようにして、店員に渡そうとした。

        「似合うかどうか分からないのなら、着てみなくちゃ分からないわよ」

        「そうですが・・・・・・そうですか?そうですね」

        店員は、試着室の方へ私を案内して、カーテンを開けて待っている。

         

         この店員は、舞のおじちゃんの知り合いだから、あまり強くも言えない。

        私は、着れば良いんでしょと心の中で思いながら、ドレスときた。

         

         白いドレスは、胸元が可愛いデザインで、嫌味なくフンワリ広がっていた。

        ウエディングドレスって、お姫様になったような気分になる。意外と気に入った。悪く無い。

        カーテンを開けると、早川君のお母さんが待ち遠しそうに、目の前に立っていた。

        「背中を向けて。ファスナーを止めなきゃ」

        「はい」

        私は、お母さんにファスナーを上げてもらい、パンプスを履いた。

        今日が食事会で良かったと、自分のパンプスが、シンデレラのガラスの靴に思えた。

        「綾さん、綾さんも女性なのね。ドレスを着ただけで、こんなに女らしい表情に変わるんだから」

        ・・・・・・普段の私は、一体どんな感じなんだろう。

        鏡の前に立って、自分の姿を見た。

         

         試着室の前にあるライトは、こんな私でも、綺麗に見えるようにしてくれている。

        鏡ごしに後ろに立っていた早川君と目が合った。

         

         どうかなぁ?投げかけるような目で、早川君を見た。

        早川君は、何も言わずに、頷いて微笑んでくれた。

         

         早川君もこれを気に入ってくれたんだと、安心して、私は、鏡越しに微笑み返した。

        「よくお似合いですよ。お綺麗です」

        店員は、セールストークを、基本手順通り言っている。

        今度、舞のおじちゃんに、腐った魚を、この店員に持って行ってと言っておこう。

         

         初めて行ったコンビニで、「いつもご利用ありがとうございます」と言われると、腹がたつ。

        気持ちが無いのに、人へ感謝の言葉を言うのは、

          「ありがとう」の言葉を軽く捉えているように感じる。

         

        「私、なんだかとても、嬉しくなったってきたわ。感動するわね。娘を嫁がせるみたい」

        ・・・・・・お母さん。お母さんの目がウルウルしている。

        私の為に、泣いて喜んでくれている。

        ありがとうと、心の中で感謝した。

        「うん。良いよ。綾・・・・・・それ良いよ」

        照れ臭そうに、笑ってくれた。

         

         早川君が、そう言ってくれると安心する。

        私は、暫くそれを脱ぐ気にはなれず、ドレスを着た自分を見ていた。

        結婚式なんて、無駄な行事だと思っていたけど、ドレスは着たい。

        「式は、大切な友人にも参加して貰いたいので、また日を改めて来ます」

        早川君は、翔ちゃんをここへ連れて来てくれるんだ。

        翔ちゃんもきっと喜ぶだろうな。

         

         シンデレラのドレスは、元の位置へ戻され、私は、自分の洋服へ着替えると、

        現実に戻され、早川邸へ、早川君の家族を送って行った。

         

         車から降りて、早川夫妻に頭を深く下げて、お礼を言い、夫妻が玄関のドアを閉めるまで見送った。

        早川君は、夫妻の後をついていこうとせず、私が乗っていた運転席のドアを開けてくれた。

        「おやすみなさい」

        運転席に座り、エンジンをかけようとしたら、

        「綾、指輪は?」と聞かれた。

        「一応、今日、もしかしたらと思って持って来ました」

        「それを」

        早川君は、エンジンをかけようとしていた私の手を遮るように、手を広げた。

        私はバッグから、指輪が入っている箱を取り出して、早川君の手に乗せた。

        早川君は、助手席に乗り込んで、その箱を丁寧に開けた。

         

         ピンク色のダイヤが、早川邸の灯りの下で、可愛く光り、何かを待っている気がした。

        私は、車の鍵を回そうとしていたまま、それを見とれていた。

        左の助手席に座っている早川君は、左手に指輪を持ったまま、

        「綾、綾がさっき綺麗だったから」

        早川君は、私の左手に、そっと手を寄せて、ピンクダイヤの指輪をはめてくれた。

        そのまま、早川君と見つめ合った。

         

         一瞬、早川君の顔が、私の髪に触れる程、近寄ってきた。

        私の体が固まり、手を引っ込めると、私の頬に触れるか触れない顔を置いたまま、

        何か遠くをみていた。

        「おやすみ」

        と言って、早川君は、笑って助手席のドアを閉めた。

         

         車のハンドルを両手で握った。

        私の指には、それぞれに思いが込められた指輪が、はめられている。

        優は、もう違う人と人生を歩む為に、私を捨てた。

        けれど、早川君から貰った指輪は、永遠。

         

         もう、優から貰ったこの指輪は、捨てなくてはならないのに。

         

        どうしてだろう。

         

        この指輪を捨てたら、本当に優がいなくなる気がする。

         

        優が泣いている気がする。

         

         早川君から貰った指輪は、幸せになるんだよと、ピンク色に輝いている。

        なのに、どうしてだろう。

         

         さっき、早川君から握られた手の感触が、違和感として残っている。

        どうしてだろう。

        幸せは、直ぐそこにあるのに。

         

         翔ちゃんの家に着き、着替え終わった後、翔ちゃんの部屋を除いた。

        浩太は、もう寝ているらしく、翔ちゃんと舞、そして、山田さんがいた。

         私は、深呼吸をして、翔ちゃんのベッドの側に立った。

        「翔ちゃん、舞、私は、早川君から、これを貰ったの」

        左指を立てて、可愛く光っているピンクダイヤの指輪を見せた。

        「いつ言うか待ってた」

        舞は気付いていたようで、あっけらかんと笑った。

        山田さんは、聞こえないふりをして、仕事をしている。

        「おめでとう。・・・・・・優は・・・・・・」

        「優は、他に好きな人が出来たんだって。だから、優はこの事を知らない」

        「そうなんだ。いいじゃない。早川君なら幸せにしてくれるよ」

        「そうよね。・・・・・・あのね、舞」

        私は、どうしてなのか、胸の奥から湧き出てくる思いが込み上げてきた。

         

        自分の本心がわからない。不安をさらけ出したい。

         

        「・・・・・・私、優から彼女が出来たから、もう来るなって言われて、悲しくて寂しくて、

         どこかに逃げたくなったの・・・・・・その時に、早川君のお母さんが優しくしてくれて、

         そ、それでね、買い物へ行った時、偶然、ダイヤの指輪を見て、それは永遠だって言われて、

         こんな辛い思いを永遠にしなくてもいいんだって思ってね。

         それでね。早川君が『家族になるんだよ』って言ってくれたの。

         それで、ダイヤを買って貰ったの。早川君のお母さんはあったかい人だったの。

         私はお母さんの優しさを知らない。

         だから、家族ってあったかいんだなぁって。家族になれば永遠に笑っていられる湯な気がして」

         

        私のお腹の中にある我慢袋が、一気に破裂して出ていた。

         

        涙が溢れて止まらない。

        どうして、幸せになるのに、悲しいんだろう。

         

        「話がドンドン進んで言っちゃって。でも、それを・・・・・・失くすのが怖かったの」

        「焦らなくてもいいんっじゃない?」

        「うん。私・・・・・・優の指輪を捨てる決心がまだないの」

         

        「結婚が、永遠に幸せとは限らないし、永遠でなくても幸せだと思うし、時間の長さじゃない気がする」

         

        翔ちゃんは、舞の方を向いて何か言いたそうな顔をしている。

        「私は幸せだから」

        舞は翔ちゃんに、笑いかけた。

         

        「私は、例えその時間が短くても、側に居たい」

         

        ・・・・・・舞。

         

         山田さんは、切なそうな顔をして、尿を入れるバケツを持ってきた。

        山田さんの顔が、キリリとしている。

        ウワッ怖い。これは、怒られる前兆。

         

        「立花 彩香。貴方は今、大切に思っている人の事を、永遠に忘れる事が出来ますか?」

         

        「・・・・・・出来ません」

         

        「でも、忘れなければなりません。貴方は、忘れなければならないのです。辛いだけです」

        「はい」

        山田さんが言うと、深い。

         

         山田さんは、翔ちゃんの事を忘れようとせず、側にいる。

        その方が辛いだろうに。20年以上も翔ちゃんを思っているままだから。

        「その指輪が、忘れさせてくれるかもしれませんよ」

        「・・・・・・はい」

        私は、案外、イヤ、根っからの単純な人間で、信用にている人には、流され易いのかもしれない。

        「永遠は時間の長さでは無く、愛情の深さかもしれません」

        「綾、私もそう思うよ」

        「うん」

        翔ちゃんは、どう思っているの?

         

        永遠は、時間の長さでは無く、愛情の深さかもしれないって、山田さんは言った。

         

        病を抱えて生きている 永遠という言葉が程遠いものになった翔ちゃんと私が、

         

        残された時間の中で過ごす愛情が深いなら、それが良いよね。

        情に流されて 情を受け止めて それを幸せだと感じ 幸福の中で満たされて入れば

        きっと 優のことなんか 忘れる日が来るはずだから。

         

         いつか 優のことを忘れることが できますように。

        わたしも 死ぬ前に 結婚という確かな幸せを 歩む方が満たされるはずだから。

         

        その夜から、私はピンクのダイヤモンドと誕生石の指輪を2つはめた。

         

         ねぇ、沙希。                        

         

        優の事を忘れさせてくれる その日まで。

         

         

        良いよね。

         

        このままで。

         

         でも、 わたしが優のことを 忘れたら

         優も わたしのことを忘れるのかな?

        そんなの さみしい。

         

         運命の人とは 離れても 必ず また出会えると 誰かが言っていた。

        運命は かえられないものだと。

        運命の流れに身を流すのは どちらの道へ進めば良いのだろう。

         

         ねぇ〜教えて沙希。

        わたしの運命の人は どこにいるんだろう。

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

        小さな愛の物語

        2018.08.27 Monday 14:45
        0

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          「小さな愛の物語」運命の人

           

           戦争で出陣した彼は残した妻を心配し、自分の魂を幽体離脱して違う青年になり、

          妻の前に現れ妻を支えた。

          妻は その青年が 彼が自分を心配して 送ってくれたのだと気付き 青年に心を寄せて行きました。

           

           それは 青年の空気感が 彼によく似ていたから。

           

          「運命の人は 外見では無い。魂が快ち良さを感じるから どんな姿で現れても 惹かれていく」

           

           

          「小さな愛の物語」ー 良き指導者

           

           20年前に勤務した総師長が、新人オリの前に言っていた言葉は今でも心に 深く残っている。

           

          自分だけが正しいと思わない事。 

           人の悪口や評価ばかりしない事。 

           自分の目先にあるものは、患者様であってスタッフでは無い。

           心に余裕を持って 人の声に耳を傾けてあげなさい。みんな仲間だから」

           

          彼女は 良き指導者。

           

          良き指導者の元には 良き指導者が育っていく。

           

           

           

          「小さな愛の物語」ー色んな愛の形

           ある女性に 恋心を抱いていた彼は、子猫のような 可愛いその彼女にだけ優しくしていた。

          その結果 彼を好きな女性から、彼女は虐めを受ける日々が続いていた。

          彼は それに耐えきれず彼女を虐めていた女性と結婚をした。

          「こんな愛情もあるのだ」と。

           

          優しさは 人それぞれ。

           

          これが 正しいという答えはないと思う。

           

          その時 その時で 自分がそれでいいと思うのなら、

          その時 その時で 自分が正直に生きたい証だとも思う。

           

           

           

          「小さな愛の物語」ー 不器用なプロポーズ

           

           退職後、寮を出る時、寮を管理している人から「新しい住所を教えてください」と紙を渡された。

          私は実家にしようかと迷っていた。

           そんな私を側で見ていた彼は、その紙を受け取り、

          自分の住所を書いて、

          その下に 一度 私の氏名を書いた後、

          彼は 私の苗字を消して、自分の苗字に書き換えてくれた。

          そんな不器用な彼の愛情表現に 感動した。

           

           彼らしい プロポーズなのかもしれない。

           

          綺麗すぎる曖昧で適当な 愛の囁きなど いらないのかもしれない。

           

          小さな愛の物語」ー来世で また 貴方に会いたい

           

           もうすぐ 転校してしまう私は、貴方へどうしても伝えておかなければならない。

          「私は 純粋に貴方を好きな思いは 変わらない。 離れても ずっと待っている。一緒に居たいから」と。

          現世で結ばれなくても、来世で 貴方と巡り会えるように、素直なままの 愛を伝えておきたい。

           

           

          「小さな愛の物語」ー噂話は 聞かなくていい

           

           俺が お前を好きだと噂されるのが恥ずかしい気持ちと、

          お前のようなモテる可愛い奴から 好きになってくれていることが 嬉しさもあり、

          お前からの愛情が、深いと自慢していた。

           

           ある日 俺の目の前で、お前は 女達から嫌味を浴びた時「ごめんなさい」と小さくなって誤っていた。

           

          その後、俺の背中で 

           貴方の愛情は 私だけが知っていればいい事だから」

          そう呟いたお前に乾杯。

           

           

           

           

           

          小さな愛の物語

          2018.08.27 Monday 08:53
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            JUGEMテーマ:小さくて大切な幸せ。

             

             

             

            「小さな愛の物語」ー 優しさに 揺らぐ 

             

            彼は 私へ 思っている事の 半分も言わない。

            そんな不器用な彼のことを、

            私は 心の中で メトロノームを鳴らしながらベースを奏でているかのように感じる。

             

            黙って 静かに大きな 優しい背中で 

            「お前を守りたい」と背中で愛を伝えてくれる。

             

            上手な言葉を 並べられるより 

            背中で 感じる愛は 真実だから。

             

            揺らぎの中で 感じる彼との空間は 心地よい。

             

             

            「小さな愛の物語」 ー 抱きしめてあげたら

             

             サッカー県大会出場がかかった大事な試合で、息子が ミスをして 失点してしまった。

            周りの仲間の励ましが 息子の心を 余計に辛くしているのが、

            息子の体全身に覆い被さっている。

            堪らないだろう。

            可哀想に。

             

            応援に来ていた大人達の冷たい空気が 

            息子を重圧して 小さくなっていた。

             

            自分の子供が ミスをすると、ついつい 言葉で または 暴力で叱りたくなる。

            それは 他の人に迷惑をかけた親としての 躾かもしれない。

            だけど 多分 それは 親のプライドだと思う。

             

             一番大事なのは「子供の傷を癒す事

             

            子供にトラウマを負わせてはいけない。

            ミスをしても それを繰り返さないことが大切。

            最初のミスの時の受け止め方で 子供は安心して

            今度は 同じ失敗を繰り返さないように 努力するだろう。

             

            子供がミスをしたら 優しく 抱きしめて。

             

            最初に味わった傷みは 優しく癒して あげたい。

            子供は きっと 安心して トラウマを消し去るから。

             

             

            「小さな愛の物語」ー 優しい男は カッコイイ

             

             いつも 子供の事を優先して 自分のことはそっちのけの遠く離れた母さんに

            「ちゃんとご飯を食べてるの?」とメールをしたら

            「優しいねぇ。優しい男は、人を攻め立て威張る男よりカッコイイ」と返事がきた。

             俺は 母さんの事を 世話がやける子供のように思えて いつも見下ろしていた。

            母さんは、親父に何の文句も言わない。

            母さんは、俺たちに何の文句も小言も不満も愚痴も言わない。

             

            母さんを思い出す時  炊事場で飯を作っている後ろ姿や洗濯物をたたんでいる後ろ姿。

            いつも 忙しそうにしている。

            だから、一緒にテレビを見てくれる時間は 愉しかった。

             

             学生の頃、お弁当を食べる時 母さんの後ろ姿を思い出し、可哀想で胸が一杯になる時があった。

            母さんの背中は 健気すぎるよ。

             

            俺は 21歳。まだ 責め立てられている。

            だから 俺もいつか後輩に 同じ事をやって威張ってやろうと思っていた。

            それが 仕事のできる大人のやり方だと思っていた。

            だけど違うんだよな 母さん 。

            威張り散らして 人を攻め立てる男は かっこ悪いんだよな。

             

             母さん いつも ありがとう。

             

             俺の 心の中には 

             いつも 黙って面倒を見てくれる母さんの優しい背中があるから。

             

             見返りを求めない母さんの愛情が 溢れている

            母さんの背中を 俺は 心の中で そっと 抱きしめた。

             

             

            小さな愛の物語」ー家族愛

            認知症は 医療的に不可解な かつ 不思議な力を持っている。

            余命数週間だと思われていた人が突然、毎食全量摂取してトイレへ行けるようにもなった。

            このスイッチを入れたのは 家族の声かけ。

            認知症の治療の基本は「家族愛」

             

             一番大切な治療は、薬や点滴ではなく「愛情」や「精神的苦痛の緩和」ではないかと思う。

             

             慢性疾患や癌でさえ 安定させることができるのではないかと思う。

             

             

            小さな愛の物語」 ーみんな仲間だから

             

             知らない島で、誰も信じられず ひとりぼっちだった。

            さみしい時 聞こえてくるのは 波の音だけ。

             

             そんな時、認知症の人達が「島へ帰る船が出るから、皆に声をかけんと可愛そうだでなぁ〜」と話していた。

            そう 自分たちは 島の中にいるのに。

            島へ帰る船に乗るのは 自分だけではなく みんな 乗せてあげたいという思いが伝わってきた。

             

            歳老いて認知症になっても「人を思いやる心は 忘れない」

             

             ひとりぼっちの私を癒してくれた 無償の愛に感謝。

             

             

             

            辛いって言えないのが、ツラいよな。  最終章  19 スキンシップ治療

            2018.07.29 Sunday 11:40
            0

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               最終章 16続編   医療はサービス業

               

               桜の花と菜の花が、相模原の河川敷に咲く頃、

              私にも春が訪れたのを、実感してきた。

               

               毎朝、浩太を送っていくのを、何となく気恥ずかしさえ感じながらも、

              浩太と歌を歌いながら、早川邸へ向かう車のエンジン音は、

              楽しいメロディにさえ聞こえてきていた。

              「おはようございます」

              ただ、その挨拶だけなのに、微笑んでしまう。

               

               目が覚めた時、天窓を見て、青空でも、曇りでも、雨さえも、

              「おはよう」と言ってくれている気がした。

               

               日曜日に早川邸で、習い事をしていたら、早川君が学会から帰ってきた。

              早川君が「ただいま」と言った後、

              私が「お帰りなさい」と返事をした。

              「ただいま」と「おかえり」は、意外に深くてあたたかい。

              そんな、普通の家庭のたわいも無い事を、幸せに感じていた。

               

               翔ちゃんは、人工呼吸器を早川君が、調整してくれて居たので、比較的安定していた。

              酸素は、1ℓ継続。

              持続吸引は、山田さんの予防を優先した看護と、定期的にチューブ交換をすれば安定。

              尿量も水分量との比率も問題なし。

               

               でも、全身の筋肉は、徐々にではあるが、硬くなってきた。

              マウスを動かしていた指も、単語位しか打てなくなってきた。

              目の所にシールを貼って、意思を伝達する方法もあるが、「まだいい」と希望していない。

               

               気管切開をして、お喋りは出来なくなったけど、

              気管切開をするまでは、吸引をする際、神経を集中させないと、呼吸困難になる可能性があった。

               

               本人の呼吸、人工呼吸器の波形、酸素飽和度、自分の呼吸をそれに合わせて、

              マスクのベルトを片方だけ外し、”今だ!”と思った瞬間に、マスクを外し、吸引をしていた。

              だから、大変だったし、怖かった。

              気管切開も、比較的早く行ったにも関わらず、それまでの期間、看護をしていて怖かった。

               

               それだけ、翔ちゃんの進行は早かったのもあるが、個人的な感情があり、

              自分が冷静でいられるようにと、脳を切り替える事に、神経を使っていたからだと思う。

              胸筋は肋骨が浮き出ていて、左右差がある。

               

               理学療法士は、呼吸リハビリを重視し、排痰を促すリハビリは余り積極的には行わなかった。

              排痰をできる機能は、もう持っていない。

              全身の筋肉を和らげる事は、呼吸補助に繋がる。

              特に胸部の肩から脇の下の手の掌サイズの箇所と、脇から肩甲骨辺りの筋肉を和らげると良いらしい。

              呼吸苦を和らげる補助呼吸は、筋肉を強く抑えるのではなく、

              本人の胸郭の動きに合わせて、手を当てるだけがベストらしい。

               

               病院では、筋肉を和らげるのは、理学療法士だけの分野かもしれない。

              けれど、在宅は、誰がやっても、それを毎日行っても構わない。

              それをしてあげられるのが、在宅の良い所だと思う。

               

               リラックスをさせてあげられるというのは、精神的にも、肉体的にも、

              大きな効果を得られる。苦痛を軽減する。

              此れが、延命の第一優先だと思う。

              専門的知識がない家族が、マッサージを行う時は、「摩るだけでいいです」

              と指導する。

               家族が行うマッサージの優先は「スキンシップ」だと思う。

              スキンシップは 精神的安定を図れる。

              何度も 同じことを繰り返し述べているが、

              精神的援助は 薬剤療法より継続的かつ重要な援助であり、素晴らしい効果をあげる。

               

               だから、予防ができ、廃用症候群が減り、機能を回復させることができる。

              それが、在宅の良さだとおもう。

               

               清拭、入浴、マッサージ、足浴、手浴、体位交換、背部から腰にかけて、手の甲を上にして、

              体の横面から、ズブッと腕を入れ、波を打つようにするだけでも、気持ちが良いらしい。

               これを家族だけが行うのは、介護負担である。

              これをヘルパーさん達が行ってくれている。

              山田さんの指導は、良い方へ繋がり、このような安定した結果をもたらせている。

               

               そして、舞や浩太の家族愛、山田さんの切ない愛情表現、友人達の励ましもある。

              隆弘は、家政婦さんのお給料の支払いを援助するために、バイトの夜勤をしている。

               

               病院の独特な臭いにおいや時間に追われたて行うオムツ交換、処置台の冷たい鑷子の音、

              声掛けもなく行われる処置、食事介助が面倒臭くて、叱られながら行われている食事介助の声。

              愛情を持っての声かけと、人を蔑んでかける声かけは、家族と同じことを言っていても、

              声のトーンが違うので、患者様には不快感を味わうだけである。

              耳障りな暴言を、言われるしか無い患者様達。

               

              そのスタッフの声が夜中も、病室に響いている。

              それが不快に他の患者様の部屋にいても聞こえてくる。

               

              「背中を掻いて欲しい」それを中々言わせない雰囲気をスタッフが作っている。

              「背中がかゆい」これだけでも苦痛な日々を送る事になる。

              これを軽減するだけでも、苦痛は軽減される。

              病院の四肢抑制は、顔に止まった蚊さえも 払いのけることは出来ない。

              ただ、黙って自分の血を蚊が吸っているのを見て、

              刺されるしかなく、刺されて痒くなったそこを掻くこともできず、

              「我慢」と「妥協」

              「苦痛を味わいながらも生かされて逃げることができない場所」

               

                  在宅なら、この苦痛を少しでも軽減する事ができる。

               

              残された時間を、大切にしてほしい。

               

              「介護や治療をしてやっている」

              のではなく

              「苦痛のない時間を 送ってほしい」

              そう思ってほしい。

               

               時々、述べている「弱い者イジメ」が、

              この人を蔑んで見ているこれに匹敵する。

               

               虐待やイジメをして 自分が優位に立っているような錯覚をしているが、

              これは イジメられている人の立場から見ると、逆だと思う。

              「イジメをするような 心の狭いチッポケでくだらない人間」

               

               病院でのスタッフの勤務時間。

              その時間は、お給料のためだけにあるのでは無く、

               

              その時間は、利用者様、患者様自身の時間だから。

               

               翔ちゃんは、舞や浩太の声がする中、家庭の匂いの中で過ごせて、幸せだと思う。

               

               

              ヘルパーさん達のスキルは上がり、指導教育を必要とする時間は少なくなってきていた。

               

               タイミングをみて、その時に必要なことのみ、スポットを当てて指導する。

              この方が、習得率が高い。

              ヘルパーさん達が、いつも出来ているか?の評価に、あまり焦点を置かないほうがいい。

              家庭での過ごし方は、家族が優先であり、その人らしくいれば、それはそれで良いと思う。

              私がそう思えるようになったのは、

              ヘルパーさんに対する山田さんの適した指導に魅せられてこそ習得したものである。

               

              「あなた達はどこへ庵っても自信を持ってやれます」

              山田さんは、そう」ヘルパーさんを褒め称えていった。

              これは、翔ちゃんが「俺の体を、今後の医療のために使ってくれ」と希望してくれたからだった。

               

               浩太が、早川邸へいくようになり、舞の負担も少し軽減してきたのか、よく笑うようになった。

              たまには舞もどこか遊びに行けば?と言っても、落ちつか無いからと、

              買い物とおじちゃんの所へ行って、魚をもらってくる位だった。

               

               山田さんは夜3日間夜勤をして、平日のヘルパー教育は、最近週に2回程にしていた。

              「山田さん、今度の日曜日、私が翔ちゃんを見ます」

              「私の楽しみを取らないで」

              翔ちゃんの顔を愛おしく思う女性の顔で見ている。

              「では、お言葉に甘えて、浩太と舞と太宰府に行ってきます」

              「3人で?」

              「はい、今の所3人です」

              「綾さん、私の耳は地獄耳よ」

              山田さんは、悪魔のような微笑みをして、私の顔を斜めから覗き込んでいる。

              「はい。すみません。ご報告が遅れました。実は私は、もしかしたら、結婚するかもしれません」

              「もしかしたらなの?」

              「はい。翔ちゃんにも舞にも言っていないんです。職場の人にも」

              「どうして?」

              「破談になる自信があるからです」

              「あなたそんなに弱気だったかしら」

              山田さんは薄笑いを浮かべて、揶揄うように私の顔を覗いている。

              「自分に自信がないからです」

              「結婚は、恋人同士になる事と違って、家庭という組織の中に入っていくんだから、色々あるのかしら」

              「私は、家族の中に入りたいんです」

              「だから、あなたは早川さんから可愛がられたのね」

              「はい。とても大切にして頂いています。娘のように」

              「じゃあ、婚約したら教えてね」

              「はい」

              この間のが、婚約になるのかなぁ。

              あれ?まぁ、いいか。

              「あっ、それから綾さん、あなたは、私が日曜日に看るという事を前提で聞いてきたわね」

              「はい」

              (ズボシ!山田さんは、勘がいい)

              「腕を上げましたね」

              「ありがとうございます」

              「その代わり、太宰府の梅が枝餅10個買ってきてよ」

              「あっ、はい」

              (10個は多すぎでしょう)

               

               私は、ピンクの指輪を外して仕事をしている。

              もし、仕事中、他のスタッフから聞かれるのも恥ずかしい。

              それに仕事がやりにくい。

              早川先生から婚約指輪をもらったなんて・・・・・・言いたい気もするけど。

               

               太宰府天満宮の藤の花と桜が見たいと言い出したのは、早川君のお母さんだった。

              舞は浩太を連れて、遊園地の方へ歩いている。浩太は遊園地を見て興奮していた。

              早川君のお母さんが、心配そうな顔をして、

              「綾さん、婚約のことを未だみんなに仰ってないの?」

              「仕事がやりづらくなるかと思って」

              「あら、私もう山田さんに言っちゃった。いいじゃない。おめでたい事なんですから」

              「私も、山田さんには報告しました。山田さんだから、大丈夫です」

              「お母さん、5月の3周年記念日の時に、みなさんへ、お伝えしようかと思ってます」

              「トックン、そうなら、そうと早く言って頂戴。喋りたいんだから」

              早川君のお母さんのこの口調は もう 他に喋っている。

              モゴモゴして 舌をペロッと出している気がした。

              この人の口は 誰も 止められない。

              「まだ、ゆっくりでいいから」

              「・・・・・・えっ?」

              「指輪はそれからで良いよ」

              「はい」

               

               私と早川君は、太宰府天満宮にかかている橋を、逆に渡ってしまった事に後になって気づいた。

              舞は、私達の事を知らないので、気にする様子もなく、梅が枝餅のお店の中へ入って行った。

               

              私と早川君は、早川君のお母さんから築かないように、

              こっそり、3個の橋を、渡り直した。

               

              山田さんのリクエストの梅ヶ枝餅10買って、

              翔ちゃんには、舞と浩太が笑っている写真を沢山見せた。

               

               太宰府天満宮の橋を逆に渡ると、縁が切れるという言い伝えがあるらしい。

              ただの迷信だけど。

               

               

               ねぇ、沙希。

              私の幸せは どこにあるのだろう。

              ここで良いのかなぁ。

              未来が見えたら 良いのに。

               

               幸せが 目の前にあるのに、それを どうしてなのか 不安に思う。

              幸せって 楽しい気分だと思う。

               

               一緒にいて 楽しい時間だと思う。

              その人が いてくれるだけで 心が満たされて 安心する。

               

               暑い日も寒い日も 雪が降っても 雨が降っても

              風が吹いても 優がちゃんとやっているか 心配になる。

               

               私は、どうしてなのか、早川君と手を繋げないの。       

              家族になるのに、手を繋げないなんて、おかしいよね。

               

              手を繋いでしまうと、心の中を見透かされてしまいそうな気がする。

               

              「私は 優のことを 忘れて 幸せになる」

              それが 私の残された 幸せの選択肢だから、

              手を繋がなければ いけない。

               

              ねぇ、沙希。

              私は いつか 早川君と手を繋げるように なるのかなぁ。

               

              手を繋いでしまったら、もう 戻れなくなる気がして

              手を繋げないの。

               

              優の誕生日プレゼントを 残したままだからなのかなぁ。

               

              ねぇ、沙希。

              優へ 届けてきて。

              私が、忘れられるように。

               

              伝え忘れている言葉が たくさん有りすぎて後悔していたけど、

              もう、言えないよ。

               

              でも ただ 一言 「優に会いたい」

              そう 伝えて。

               

              お願い  沙希。

               

              いつになったら 幸せのお芝居を 演じなくて 済むのだろう。

              情に流されて 本当に 好きになれば良いのに。

              そんな日が 一体 いつになったら 来るんだろう。

               

              わたしは 嘘をつくのが苦手だから。

               

              早川くんを 傷つけるのも 出来ない。

               

              本当の優しさって どっちなんだろう。

               

              ねぇ 沙希。

              沙希なら どっちを 選んだの?

              教えて 沙希。

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

              辛いって言えないのが、ツラいよな。  最終章  18 生きていたい

              2018.06.24 Sunday 15:42
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                 私は携帯電話を手に取り、舞に早川君のお母さんと買い物へ行くと伝えた。

                「あちゃぁ〜、大変だねぇ〜お嫁さんは。早川君も一緒?頑張ってね。分かった。ハイハイ」

                舞はそう言ってガチャっと電話を切った。

                何が大変で、何を頑張ってか?私の頭の中は、❓❓クエスチョンマークで埋まった。

                しっかし、舞は相変わらず舞ペースだなぁ。

                 舞との電話の内容を思わず早川君に喋りそうになったのを我慢した。

                変な勘違いされると、気不味くなってしまう。

                自然が一番良い。

                ぎこちないのは居心地が悪い。

                 

                 不思議な顔をしてボゥ〜と立っていた私を見かねて、車のウインドーから

                「どうしたの?」

                と静かな口調で声をかけてくれた早川君に

                「ウウン、なんでも無い」

                そう言って微笑むと、笑顔で頷いてエンジンをかけた。

                 

                 車の後ろに乗ろうとしたら

                「綾さんは助手席よ」

                車の後部座席にいる早川君のお母さんは、私に向かって手を広げ、” DON'T ” と

                私が後部座席に乗るのを差し押さえた。

                「だって事故にあった時、助手席が死ぬ確率高いから怖いじゃ無いの」

                「えぇ〜そんなぁ〜」

                私はこの人はなんて良い人なんだとつくづく思いながら、

                恥ずかしい気持ちをバレないように、笑って誤魔化して助手席のドアを開けた。

                「ゴメンね」

                早川君はお母さんの言葉に対して謝っている。

                「大丈夫です。わかっているから」

                早川君は私の言葉に安心した顔をして、ハンドルを握った。

                バックミラーには、ウキウキした嬉しそうな早川君のお母sんの顔が写っているだろうと想像しながら、

                私は買い物同行という軽い気持ちで、呑気に車の助手席に寄りかかっていた。

                 

                 私は、てっきり近くのスーパーへ行くのかと思ったら、

                舞鶴まで行き、例のあのデパートの中へ入って行った。

                 

                 そう言えば 買い物って何を買うのか聞いていなかった。

                勝手に夕飯の食材だとばかり思い込んでいた。

                私は 時々 いや かなりよくあることだけど、突っ込んで話を聞かない。

                大体、仕事以外のことは人に身を任せている。

                仕事以外のことは ”なるようになる ” みたいな性格。

                だから、計画性もあまりなく、気の向くままなところがある。

                 

                 でも、まさか・・・・・・優の指輪を買ったあのデパートへ行くとは・・・・・・。

                まぁ〜良いかぁ。

                なるようにしかならない。

                店員さんから暴露されても 仕方ない。

                それに あの指輪は まだ 優に渡していない。

                私の部屋に置いたままになっているから。

                そんな言い訳を頭の隅で考えながら、デパートの駐車場からエレベーターに乗った。

                 

                 お母さんが、アロマオイルをいつも買っているというお店の中に、

                連れられてしまった。

                買い物が嫌いな私は、食品売り場で食材を買って、

                早く用事を済ませれば良いのにと思っていた。

                開き直りたいけれど、なんとなく落ち着かない。

                まるで 犯罪でも犯したのが バレるかもしれないような気分になっていた。

                 

                 でも、アロマオイルは好きだから、見ているうちに、楽しくなり、匂いを嗅いで楽しんだ。

                早川君は、ヒノキのお香の前に立って、じっくり考え込んでいた。

                ヒノキの香りが気に入ったらしい。

                ヒノキのアロマは、どこにでもあるわけではなく珍しいと、お店の人が言っていた。

                それが本当かどうか分からないので、半分聞き流した。

                信用性がない人のサービストークは信じないことにしている。

                どうしてかというと、私はすぐ 人を信じてしまうから、

                後でショックを受けることが多すぎる。

                だから、なるべく信用性がないサービス営業トークは 信じないように気をつけている。

                 

                 ヒノキの香りがするアロマを、私は嗅いだ事がなかった。

                早川君が言う通り、確かに、ヒノキの香りは良い。

                「ヒノキのアロマを買おうかと迷っているんです。でも男が買うのも変ですよね」

                「そんな事ありませんよ。この香り好きです」

                「良い香りですよね」

                「好きです。これ」

                「これね。これ」

                早川君はそう言って、ヒノキオイルを2瓶持ってレジへ向かった。

                「2瓶も買うんですか?」

                「チョコのお礼です」

                「はぁ〜」

                「ヒノキのアロマは癒やされるわよ。嫌いなの?」

                「いいえ、好きです」

                早川君のお母さんは、悪戯っ子みたいな顔をして、私と早川君を交互に見た。

                「それは良かったわ。だったら、そうなさいね」

                別に、早川君のために作ったわけでもないチョコのお礼を買って貰った。

                 

                 早川君が買う時に、” これは綾の分です” って言えば、 ”要りません”と言ったのに!

                白衣を着ている時は、イエスとノーを、ハッキリと言うのに、

                白衣を脱いだら、曖昧に誤魔化している気がする。

                このギャップと揺らぎが 堪らなく・・・・・・ 良い。

                 

                 いつもの私なら、男の人からプレゼントをもらうことなどは、断固拒否してきたのに、

                私を不快にさせない。

                どうしてだろう。

                私の中では、絶対的に信頼できる医師ではあるんだけどなぁ〜と、早川君の背中を見つめた。

                 

                 いつも見ているその背中を、逞しいと感じた自分に驚いて、ドッキっとした。

                ・・・・・・どうしよう。

                 

                 さっきの”好きです”という言葉を、違う意味で取ったかもしれない。

                嫌いじゃないけど、好きかと聞かれると答えようがない。

                 

                 今まで私は、そんなに早川君の事を 好きとか嫌いとか、異性として意識した事がない。

                だから私が、この人を好きになるはずは無い。

                ただ何となく、スーツ姿の背中が、私の中に、モヤモヤした感情を残した。

                このモヤモヤした感情はなんだろう。

                 

                 アロマのお店の斜め前に、例のあの宝石店がある。

                この前来た時に対応した店員がいたら、マズイ!

                やっぱり不味い。

                折角の幸せへの展開が 壊れてしまう。

                ・・・・・・どうしよう。

                 

                 はっきり 正直にいう方が楽な気さえしてきた。

                でも、そんな勇気など持ち合わせていない。

                平和主義者の私は、日々平穏無事に終わることを目標にしている。

                ここで 平和が遠ざかると、明日からの仕事にも影響する。

                 

                 私は、宝石店と反対側へ顔を向け、早歩きをして通過しようとした。

                「あらっ!これ素敵だわ」

                ガァ〜ン。嫌な予感。

                こんな時は、聞こえなかった振りをするに限る。

                小走りで6歩くらい行けた所で、足を止められた。

                「綾さん!ちょっと綾さん」

                どうして相模原町の住民は、大きな声を出して、人の名を呼ぶのだろう。

                「ハイ」

                仕方なく後ろを振り向き、顔を引きつらせながら返事をした。

                私の思いとは裏腹に、屈託のない満面の笑みで手を振っている。

                通り行く人の波が、私の顔を少し微笑みながら見ている。

                 

                「あなたが 綾さんですか。呼んでいますよ、ご愁傷様」

                 

                とでも言いたい様な感じで、口に手を当てながら通り過ぎる人もいる。

                 

                その人達へ、この人とは知り合いではありませんと言いたい気分で暗くなってしまった。

                そんな私の思いは御構い無しのようで、

                「ちょっと、これ素敵じゃない」

                全く興味がない指輪のケースを覗いたまま動こうともしない。

                仕方なく私は 早川君のお母さんが指差す指輪の方へ視線をやった。

                 

                  照明が当たって、キラキラ輝いている指輪を、楽しそうに見ている。

                 

                 ただ売るための攻略に過ぎないと、わかっているのに。

                どうしてだろう。

                 

                 私はこの人が、嬉しそうな顔をすると、安心する。

                そして、嬉しくなる。

                もっと、笑って貰いたいと思うし、もっと、嬉しそうな顔をしていて貰いたいと思う。

                多分、この人が喜ぶことは、良いことだと認識するのだと思う。

                「すみません。迷惑ですよね」

                その時、ふと早川君が自分の母親の事を身近に感じ、謝っていることに焼き餅に似た感情を抱いた。

                それが早川君に対してなのか、早川君のお母さんに対してなのかわからないけど。

                「そんな事ありません。早川君のお母さんて、子供みたいに邪気が無くて、可愛いですよね」

                「そうしているのは、綾だから」

                「私がですか?何もしていませんよ」

                「攻撃性がないからです。綾に」

                「私は単純なんです」

                「綾といる時、母は嬉しそうな顔をしています。だから・・・・・・安心します。僕は」

                 

                私は中学の時、漢文がとても好きだった。だから、この言い廻し方が気になる。

                 

                 ” だから、僕は安心します ”と言われたら、引く。

                 

                 ” だから、僕も嬉しいです ” と言われたら、引く。

                 

                 早川君の言葉、一つ一つが気になる。

                 

                お母さんの話題に変えよう。

                「良い人ですよね」

                「そうですか?かなりの自己中だと思います」

                「私は宝石に興味がないんです。でも、早川君のお母さんが笑うと、パワーストーンに思えてきます」

                「それは凄い」

                「楽しそうに笑うからでしょうね」

                「良かった。・・・・・・脳は書き換える事が出来るんです」

                 

                「じゃあ、私は、今この時点で、書き換えているんですね」

                つまらない事が、楽しくなるなんて面白い!っとワクワクした。

                それが楽しい事だと私の脳が判断して、嬉しい表情になっているのが自分でも感じた。

                「でも、直ぐにインプットしたらダメですよ。それは単なる思い込みです」

                私は何でも、顔に直ぐ出る。だから、人から心を読まれる。

                裏も表も持っていない。 

                 だから、いつもストレート。

                気を付けよう。

                早川君を異性として意識し始めている事がバレそうだから。

                 

                「今まで興味が無かった物を、急には、好きに成れません。信用があれば、別です」

                「信用ですか」

                「そう。嫌いだった事でも好きになったりします。興味が無かった”もの”でも」

                「そう・・・・・・ですか」

                「そう。そこにあるのは、情です」

                「情で書き換えられるのですか」

                「そうです。脳は毎日動いているんです。右脳と左脳を両方使えば、もっと面白いんですよ」

                「例えば?」

                「右利きだからと言って、右だけ使うのではなく、左でお箸を持ったり、足で字を書いたり」

                「その発想、面白いですね」

                私は早川君と喋っているのが、楽しくなって、ハハハッと笑っていた。

                「あら、あなた達、こんな素敵な物を目の前にして、ゴチャゴチャと」

                「すみません」

                あっさりした口調で叱った早川君のお母さんは、お店の中の綺麗な品物を、

                じっくり味わうように、ゆっくり歩き始めた。

                仕方なく、私達も後ろを付いて歩いた。

                あの店員さんは居ないみたい。今日はお休みかも。

                 

                 何にも考えてなさそうにポンと言うけど、この人、賢い。

                さっき、静かにしなさいと言えば済む所を、こんな綺麗な物と言う言葉を先に出した。

                 

                 私の頭の中には、綺麗と言う言葉で、綺麗な物のイメージが強く湧く。

                その脳に、”ゴチャゴチャ”と言う言葉を聞いても、

                不快な感じに成らずに、静かにしなさいと言う事だと受け取る。

                 

                しかも、語尾をモゴモゴと丸め込むように言って、誤魔化した。

                 

                 私は、金色の文字に書かれた言葉を見て、立ち止まった。

                 

                『永遠の絆・永遠の愛・永遠の誓い』

                 

                ・・・・・・永遠。

                 

                 そんな事を、こんな物で約束出来ない。

                生命保険じゃ有るまいし、こんな物で永遠の愛なんて、保障しては貰えない。

                私に永遠を誓ってくれる人なんか居ない。

                「ダイヤモンドは素敵ね。この指輪をはめているだけで、守られているって感じがするわね」

                「そうなんですか?それって保障されている感じですか?」

                「保障と言っても、補う補償で良いのよ。永遠を補いながら尽くします。それで良いのよ」

                「成る程、補う方の保障ですね」

                「どのようなデザインの物がお好みですか?」

                若い女性の店員さんが、声をかけてきた。

                「買わないので。見ているだけですから」

                と、私は店員さんに、これ以上は来ないでという感じの態度で、キッパリ断った。

                「あら、綾さんこれ素敵よ。嵌めてみて。嵌めるのはタダよ。これが良いわねぇ」

                早川君のお母さんは、グリーンのダイヤを指差した。

                 

                 その時既に店員さんは、鍵を手に取り、鍵を開ける体制に入っている。

                このタイミングを逃さないという感じだ。

                「綾はどれが良いの?」

                隣にいた早川君から聞かれた。

                店員さんと早川君のお母さんが、ダイヤモンドのキラキラした光を浴びながら見ている。

                この雰囲気で、ダイヤモンドなんて別に興味がない・・・・・・なんて言えない。

                「ウゥ〜ン。迷いますね」

                「綾の好きな色は?」

                「別に拘りはないです」

                「じゃあ、好きな花は?」

                「ガーベラ。ガーベラを見ると癒されます」

                「お店でガーベラが沢山並んでいるとしたら、何色のガーベラを選ぶ?」

                「ピンクです」

                「じゃあ、綾が好きな色は、ピンク」

                そんな風に言われてみると、ピンクが好きなのかもしれない。

                かと言ってピンクの洋服を着るわけではない。

                でも、ピンクのガーベラを見ると、元気が出る。

                「じゃあ、ピンクのダイヤを」

                えっ?ピンクのダイヤ?今ガーベラの話をしていた・・・・・・だけなんだけど。

                「左の薬指でよろしいんですよね」

                店員さんは、早川君と私を交互に見た。

                嵌めるだけなら、タダと言っていたから、別に意味は無い。

                意味は無いけど、なんて答えて良いのかわからず、早川君を見た。

                 

                 早川君は、強引にそれを決める感じではなく、大丈夫だよというような顔で、

                優しくニッコリ微笑みながら、頷いてくれた。

                「左の薬指は、永遠なんだから」

                早川君のお母さんが、私の背中へ、子供をあやすかの様にそうっと手を当ててくた。

                左の薬指は、永遠。早川君のお母さんが言った言葉を、あたたかいと感じた。

                そして、待ってくださいという間も無く、店員さんは指輪のケースを持って待っている。

                早川君の顔を見た。

                早川君は、ニッコリ笑って、私のバッグを持ってくれた。

                そして店員さんは、今だ!という感じで、私の左の薬指にはめた。

                ウワッツ!本当に、はめた。

                 

                でも、・・・・・・以外と素敵。

                 

                 私は、四方八方から照らしているライトの位置で、色が微妙に変わるダイヤモンドを、

                斜めにしたり、上にあげたり下に下げたり、動かしてみた。

                 

                    このダイヤモンド綺麗。

                 

                 ピンクのダイヤモンドは、リングの中で、凛としている。

                そして、強かな感じがする。

                 

                 その強かさの中に、可憐な日本女性の姿を思い浮かばせる。

                あの内裏雛のお姫様の唇みたい。

                「あらっ、それも素敵だわぁ。綾さんそれが似合うわ」

                「そうですか。これ可愛いですね」

                なんだか、お店のモデル商品なのに、段々自分の物の様に思えてきた。

                「これで宜しいですか?」

                「アッ、待ってください。これは買いません」

                危ない、危ない。買わされるところだった。

                「はい。それを」

                ・・・・・・早川君。

                私は、どうしようと迷って、早川君の顔を除いたのに、

                優しい顔で、ただオモチャを買ってあげるだけだからという様な、

                軽い感じの声のトーンが、私の耳に心地よく入ってきた。

                それが、居心地よく、それを失うのが怖くなった。

                「・・・・・・良いんですか?」

                「勿論。何か問題はありますか?」

                「・・・・・・ありません。いヽえ、有ります。こんな高い物を買って頂くなんて・・・・・・」

                「お金の心配ですか?」

                 

                この指輪を手にしなかったら、私は永遠に幸せが来ない気がした。

                 

                また、ひとりぼっちになる気がした。

                 

                この人は、多分、永遠に私の事を大切にしてくれる。

                 

                こんな私を、受け止めてくれる。

                 

                この指輪があれば。

                 

                独りぼっちは、怖いから、これを買って下さいと、泣きそうになった。

                 

                 早川君のスーツを摘んで、買って!と、せがみたくなった。

                言葉を選んでいたら、本当に泣きそうになって、早川君を見つめた。

                「お金なら心配ない」

                「はい、でも・・・・・・良いんですか?」

                「何も心配しないで。大丈夫だから」

                ・・・・・・大丈夫だから。

                その言葉だけでも良い。

                私は、コクンと頷いて、ありがとうの言葉を伝えた。

                あんなにシャキシャキお喋りしていた早川君のお母さんは、いつの間にか、いなくなっていた。

                 

                 食材の買い物を終え、早川邸で夕食を囲み、お茶碗を洗っている時に、

                ふと、我に返った。あの時流れで買ってしまったけど、

                良く考えて見ると、これってやっぱり、結婚をするって事?かなぁ〜。

                 

                私もしかしたら・・・・・・婚約したの?

                 

                「エッ?エェ〜、エェ嘘!」

                 

                私は、いきなり大きな声を発してしまった。

                「あら、綾さんどうなされたの?」

                「いヽえ、別に。あのぅ〜、すみません。勝手な妄想・・・・・・もしかしたら指輪って」

                「ハハハッハハ。あら可笑しいわぁ。ハハハハッハハハ」

                「可笑しいですよね。もしかしたら、婚約指輪って言う意味だったのかなって」

                「他にどんな意味がるの?」

                「だとしても、そのぅ、そういう事を言われてないって言うか」

                「ハハハハハッハハ。トックン、綾さんが可笑しな事言うから、どうかしてあげて!」

                早川君のお母さんは、立ち上がり、2階にいる早川君に向かって言っている。

                2階から階段を、ドドドドと速いテンポで降りる足音がした。

                「ハハハハハッハハ」

                「綾、どうしたの?お母さん、そんなに笑って」

                「私、今、大変な事をしたのかもしれないって気づいて」

                「ハハハハハッハハ、貴方、今気付いたの?ハハハハッハハッハハ」

                「早川君ごめんなさい。私大変なことしたんですよね。ご迷惑をお掛けしてしまって」

                「お母さん笑い過ぎだよ。綾が困ってるから」

                「だって、今日買った指輪は、婚約指輪だったのか、分からなかったって仰るんだもの」

                「私、勘違いしているのかもしれないって・・・・・・してますよね」

                「私は、お風呂に入って来るわ」

                早川君のお母さんは、お風呂場へ行った。

                鼻歌を歌いながら、お湯をためている音がする。

                「綾は、迷惑なの?」

                「いヽえ」

                 

                「綾、綾と僕は付き合っていた訳じゃない。けど、こう言うのはタイミングなんだ」

                 

                「タイミングですか?」

                 

                「大丈夫だから」

                「はい」

                 

                「心配しなくても大丈夫。永遠に」

                 

                「永遠ですか?」

                 

                「そう、永遠に。忘れられない人が居たとしても、それでも良いんだ・・・・・・綾が」

                「・・・・・・私で良いんですか?」

                 

                「綾が良いんだ。僕のお嫁さんは綾が良い。だから、家族になろう」

                 

                「家族ですか・・・・・・良い響きです」

                「今日買った指輪を持ってきて」

                 

                 私は、リビングの椅子に置いたままにしてあったバッぎから、指輪の箱を取り出した。

                早川君は、その箱を開けて、私の左指にはめてくれた。

                私の左指可愛いピンクのダイヤが輝いている。

                「綾のことはずっと好きだった。この指輪を渡す前にプロポーズをしていたら、綾は断ったと思う」

                「そうかもしれません」

                 

                「家族になろう」

                 

                 もし、早川君が「君の事を生涯愛します」とか「一生幸せにします」と言う人だったら、

                受けていなかったかもしれない。

                 

                「家族になろう」と言う言葉に、曖昧な愛情を感じなかった。

                それに、このお家には、あたたかいお母さんがいる。

                私は、早川君に正座をして、よろしくお願いしますと頭を下げた。

                 

                 ねぇ、沙希。

                私は、早川君と家族になります。

                 

                 タイミングとは、チャンスなのかも知れない。    

                 

                 舞たちには、まだ、言えない。

                恥ずかしいから。

                 

                沙希、私にも家族ができるんだよ。

                 

                家族って、絆が深い気がする。

                 

                自分がいつ死ぬか分からないって思ってきたけど、

                早川君が永遠だと言ってくれた。

                 

                 早川先生が、永遠だと言ってくれたから。

                だから、信じる。

                 

                沙希、私がもう少しだけ 生きていられますように。

                 

                死ぬのは お嫁さんになってからに、してほしい。

                 

                私は 生きたい。

                そう思わせてくれる家族がいる。

                 

                元気になれる人がいる。

                 

                飾らなくても そのままで 受け止めてくれる人がいる。

                 

                それが 幸せっていうものなのかもしれないね。

                 

                沙希・・・・・・私は 生きていたい。

                 

                ゴメンね 沙希。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                辛いって言えないのが、ツラいよな。 最終章  17   心地良さは 嘘がないから。

                2018.06.24 Sunday 13:58
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                   最終章 16 続編  

                   

                   先週に引き続き、今週も断る理由もなく、

                  早川君のお母さんの言葉と雰囲気とタイミングの上手さから逃れることが出来ず、

                  私は洗濯をしながら、翔ちゃんの経管栄養注入時の状態を見守った。

                   

                   注入前の吸引では、粘調性の唾液を少量回収。

                  注入後は咽頭部に痰貯留あり回収したが、注入直後は吸引の刺激で王としてしまう可能性あり、

                  2回でやめた。

                  右側臥位にして、笑顔で「大丈夫よ」と声をかけると、

                  人工呼吸器のリークも安定してくる。

                  この安心感が呼吸苦から逃れられるポイントでもある。

                  人間は本当にナイーブな細胞の塊だと思う。

                  精神的な援助で、身体的援助が行える。

                   

                   気がかりなのは逆流してきている感じがする。

                  腸から胃の方へ逆流してこないようにしている幽門や

                  胃から食堂へ逆流してこないようにしている噴門の括約筋の状態も落ちてきているのかもしれない。

                  便秘もこれに深く関与している。それにサポートをしないと腹式呼吸が出来ない。

                   翔ちゃんの腹部にはガスが貯留している。

                  胃や腸のガスは、酸素と二酸化酸素の血液ガスの問題だけではなく、呼吸苦の要因になる。

                   それに「ストレス」

                  これは私には分からない測り知れないものがある。

                  翔ちゃんは何も言わない。何も言えない。何も伝えられない。

                  言ったらみんなを困らせるからだと思う。

                  だから「辛い」って言えない。

                   

                   器質的に几帳面なので、どうしてもこれは我慢できない!という面は、譲らないけれど、

                  画期的な活動をしてきた自分が、走り回って転びそうになっている自分の子供の腕を掴んでやれない。

                  どんなに歯がゆい思いでいるのか・・・・・・。

                  それを我慢するのが辛いのか、それを失い死を選ぶのが辛いのか・・・・・・。

                  私もわかななくなってきたよ。

                  もしかしたら、私は酷いことをしているのではないかと、時々思うよ。

                  翔ちゃんは、どう思っているのだろうか。

                  それを聞いたら終わりのような気もする。

                   もしも、もしも自分だったら、どう思うのかな?

                  分からないから何も考えたくない。

                  考えるのが辛いから、

                  私はきっと、多分「眠らせてほしい」と言うだろう。

                   

                   翔ちゃんは、リークの動きを厳しく見ている私の顔を見逃さず見ていた。

                  翔ちゃんを心配させてはいけない。

                  「翔ちゃん、私今から早川君のお母さんに作法を教えてもらいに行ってくるね。厳しい先生なのよ」

                  翔ちゃんは、早川君のお母さんが、私に作法を教えているのを想像してか、

                  思い出し笑いを浮かべているように感じた。

                  翔ちゃんは、私の目を見て、パソコンの方に視線をやって合図した。

                  「パソコン?」

                  目を何となく閉じた感じになった。

                  はっきりとアイコンタクトができなくなってきたから、

                  よく観察して、気持ちを汲み取らなければ意思疎通ができない。

                   

                   翔ちゃんの体を左側に寄せて、パソコンを翔ちゃんの右側のベッドの脇に置いた。

                  翔ちゃんは、少し揶揄うような顔をして

                  「お嫁さんになるの?」

                  とパソコンで打った。

                   私はその言葉にドッキとした。

                  自分には味わえない幸福感だと思っていた物。

                  それをこんな私でも、味わえるのかも知れない。

                  心の中で ” どうせ私はもうすぐ死ぬのかも知れないんだから幸せになんてならなくても良い”

                  そんなふうに思っていたけれど、幸せになりたいと我儘を言っても良いのかも知れない。

                  もう私の余命は短い。

                  残りの時間がないから、素直に生きても良いのかも知れない。

                  そんな風に我儘を言えていたなら、優を失うこともなかったかも知れない。

                   

                   家政婦さんが10時の交代時間がくるからか、忙しそうに翔ちゃんの周りを掃除している。

                  噂話が好きな女子の前で、言葉に出して伝えるのは危険。

                  噂話は小さな話がとんでもない話に広がる。

                  こんな話題は、女子の憩いの暇つぶしにされてしまうだろう。

                  プライベートの事は、文字通り本人自身のことであり、本人にしか分からないのに、

                  女子は余計なことを詮索して面白いネタにする。

                  本当に面倒臭い生き物だと思う。

                   

                   家政婦さんが何かを取りに翔ちゃんの部屋から出て、階段を降りる足音がした。

                  「翔ちゃんパソコンのその文字は削除するよ。面白ネタにされるから」

                  私はパソコンの文字を一文字ずつゆっくり消していった。

                  これを打ってくれた翔ちゃんの想いは、私の幸せを願ってのことなんだとひしひし感じたからだった。

                  「翔ちゃん、私・・・・・・なれるかな?」

                  翔ちゃんに微笑みながら聞いてみた。

                  翔ちゃんは閉じなくなってきている瞼を、懸命に動かそうとしてくれている。

                  「ありがとう」

                  家政婦さんと介護の人が交代の時間になり、翔ちゃんの部屋に2人で入ってきて申し送りをしている。

                  翔ちゃんは、私がどんな意味を込めて「ありがとう」と言ったのか知りたい感じだった。

                  純粋に ”人を思いやる ” そんな優しい顔をしている。

                   翔ちゃんから、素直に生きなさいと言われている気がした。

                  (そうだね。それも悪くないね。素直に臆病にならず、我儘を言ってみようかな)

                  私は心の中で、翔ちゃんに話しかけた。

                   不思議なもので、当の本人にはその気が無くても、周りの人達からチヤホヤ囁かれると、

                  段々その気になってくる。

                   私もなんと無く、意識している。いやかなり意識し始めている。

                  早川君は優のことで、どん底に落ち込んでいる私の中に、ストライクでストーンと入ってきた。

                  これは、タイミングだと思う。

                  (お嫁さんかぁ〜、悪くないなぁ。良いかも)

                   介護の人と家政婦さんに現状の情報共有をして「よろしくお願いします」

                  とだけ言って、2人にどこへ行くとも告げず翔ちゃんの部屋を出た。

                   

                   着物一式が揃っているのかを再確認して早川邸へ車で向った。

                  翔ちゃんの家の高台から、海岸沿いに出た時、海は広いんだなぁと改めて感じた。

                   ” どうせ私なんて 何でも私が我慢すれば良い ” そんな風に生きてきたけれど、それは良い子じゃない。

                  ただの 心の器のちっちゃい臆病な人間 。

                   

                   私も幸せになりたい。

                   私は幸せになる。

                   私は幸せになれる。

                   生きているから、その権利を持っている。

                   たとえ、その時間が短くても長くても変わりはしない。

                   幸せだと思える権利をみんな平等に持っている。

                   

                   早川邸に着き、早川邸の駐車場に置いている早川君の車の横に並べて止めた。

                  (今、早川君居るんだ)

                  早川邸の玄関チャイムを鳴らした。

                  「ハイハイ、いらっしゃい。空いているわよ」

                  「アッ、ハイ。入って良いんですか?」

                  「アラッ、綾さん他人行儀な!早くお入りなさい」

                  「アッハイ」

                  (他人行儀なと言われても、まだ他人なんだけど)

                  ・・・・・・まだ他人?私はなんてことを思っているのか。

                  自分で思ったことが余りにも突飛容姿もつかないことだったと、

                  自分に対して私なんてバカな事を想像したんだろうと、笑いがこみ上げてきた。

                  「何を一人でニヤニヤしているの?さっさとお入りなさい」

                  私はどんな顔をしていたのだろうと、恥ずかしくなって真面目な顔をして玄関のドアを開けた。

                   

                   早川君はリビングにはいなかった。

                  理事長が相変わらず、ドッシリとお気に入りのソファに座っていた。

                  軽く挨拶をした後、茶の湯が行われる部屋へ行き着物を身に纏った。

                   幾分慣れて着たけれど、時間が経つと帯や着物が崩れてくる。

                  着物の着付けは、腰紐の締めが大事らしい。

                  腰紐というから腰部かと思いきや、結ぶのはウエストだった。

                  一番細い所でキツく結ぶから、着崩れしにくいらしい。

                  着物を着るのに、1時間は掛かってしまう。

                  でも、嫌ではない。

                  着物を着ると日本人なんだなぁって実感する。

                   

                   早川君のお母さんから、華道を教えて貰った。

                  お茶の立て方だけではなく、障子の開け方や畳の上の歩き方、人への器の出し方等

                  作法は中々奥が深い。

                  だから綺麗にそれが出来ている早川君のお母さんを尊敬する。

                  不快な感じがない。

                  むしろ、かなり居心地の良さを感じる。

                   

                   お茶を立てる時、人は「無」になるそうだ。

                  昔、戦国武将達は、どんなにお互い争っていても、どんなに卑劣な事を考えていても、

                  この時間だけは、人は平等に「無」になったと教えてもらった。

                  人が平等に「無」になれるのは、当たり前のようで当たり前ではない。

                  だから、この時間は居心地がいい。

                   そして、このお茶の時間、つくづく思うことがある。

                  「 人は待つことが大切なんだ 」と。

                  お茶を飲むまで時間がかかる。

                  作法を踏まえるから時間がかかる。

                  そこは省略して、お茶だけ飲めば良いとも思うけど、

                  段々その作法があってこそだと思えるようになってきた。

                   静かな時間の中に、厳かな空気が流れ、「無」の心になる時間を与えてくれる。

                  そして、しなやかな振る舞いの中、おもてなしの心「 侘び 寂び 」

                  が込められたお茶をいただく。

                   人は誰も 侘しさや寂しさを持ちながら、それを打ち消して生きている。

                  この時間は、それを素直に心に秘めた思いを込めて、お茶を立ててくれる。

                  ” あなたも わたしも 同じ思いですよ。同じ人間同士だから ”

                  そう思わせてくれる。

                  だから、居心地がいい。

                   

                   そんな居心地の良い作法の時間を終えると、リビングで早川君が

                  「じゃぁ、行こうか」

                  と早川君のお母さんに声をかけていた。

                  「アラッ!トックン誘う人が違うでしょ?」

                  「あぁ〜、綾・・・・・・さん、買い物行こう」

                  早川君はいつもと違ってかなり照れながらも、最後の「行こう」の部分は、

                  軽いリズム感で快く私の耳に伝わってきた。

                   行く?と聞かれていたなら、行かないと言ったかもしれない。

                  人を誘うときは、優しく微笑みながら、威圧感なく、リズミカルに「行こう」が良い感じがする。

                   

                   私は、一旦早川君のお母さんの顔を伺った。

                  目を細め、笑みを浮かべて、聞こえない振りをしている早川君のお母さんの優しさが心地よく、

                  降参の白旗を心の中で挙げた。

                  この親子に降参!

                  「ハイ」

                  私は早川君に笑顔で微笑みながら返事をした。

                   

                   

                   ねぇ。沙希。

                  これが自然な運命の流れなのかもしれないね。

                   

                   その為に、私は ここ相模原へ来たのかもしれないね。

                  何か意味があるから、運命的な出会いがあるんだと思う。

                  これが 最終的な運命なのか、途中下車なのか、寄り道なのかわからないけれど、

                  何か意味があって 出会った人だから、自然に身を任せてみようかな。

                   

                   それが間違いでも 正解でも どちらでも良い。

                  わたしが そうしたいと 自分で思うように 生きてみたい。

                   

                   そうすれば 後悔しない気がする。

                  それって ワガママかなぁ。

                  でも それで 良いよね。

                   

                   素直に生きたいと 私が思うから。

                  自分を 信じようかな。

                  沙希の分まで・・・・・・ウウン、いや沙希と一緒にだな。

                  沙希がいてくれるから 幸せになれる気がするよ。

                   

                  ありがとう 沙希。

                   

                   


                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                  辛いって言えないのが、ツラいよな。  最終章  16 雪洞の灯りに 照らされて

                  2018.06.10 Sunday 09:20
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                     最終章  続編   雪洞の灯りに 照らされて

                     

                     翌日の夜、山田さんが翔ちゃんのお世話をしている時、翔ちゃんの部屋を覗いた。

                    そして、山田さんに早川君のお母さんと食事をした事や浩太のバレンタインデーチョコを、

                    作った事を報告した。

                    早川君のお母さんは、良い人だった事を強調した。

                     

                     山田さんは、しなやかな手で、翔ちゃんのマッサージをしながら、

                    黙って聞いてくれていた。

                     

                     早川君のお母さんは、最初苦手だったけど、本当は優しい人でしたと付け加えると、

                    「そう。ありがとう」

                    自分が褒められたかのように、嬉しそうな顔をして、ニッコリ微笑んだ。

                    その時、私は感じた。

                     

                     私が、早川君のお母さんに心を開いたのは、山田さんが信頼している人だったからかもしれない。

                    ・・・・・・だからなんだ。

                    お母さんは、こんな人だと思ったのは。

                     

                     よく子供は、自分の母親が仲良くしている人に対して、

                    「この人は信じられる」と察知する能力があるらしい。

                    それと同じ感情だったかもしれない。

                     

                     翔ちゃんは何か言いたそうな感じだった。

                    それが言えずに、人工呼吸器のアラームが鳴った。

                    山田さんは、持続吸引を変えたり洗浄したり、マスクの位置を変えたり、

                    頭の位置や体位をかえたりしていた。

                    翔ちゃんの唾液が粘調性が増してきている。痰も多く粘稠になってきている。

                     

                     翔ちゃんの持続吸引チューブの詰まりが、頻回になってきたので、

                    ネブライザーを定期的に使用して良いのかを、早川先生に確認するように言われた。

                    山田さんは、翔ちゃんの呼吸状態安定させようと、

                    持続吸引のチューブに水を通したり、口腔ケアを丁寧に行ってた。

                    「はい。指示を貰っておきます」

                    「お願いします」

                    「あの私、明後日まで有給なので、明日の夜変わりましょうか?偶には、休まれてた方が・・・・・・」

                    「私が休んだ方が何?良いの?」

                    「・・・・・・いいえ・・・・・・そうですね。すみません」

                    山田さんは、私の顔を見ず、何処かへ行った。

                     

                     そして、翔ちゃんの尿が入っている尿バッグを、捨てるバケツを持ってきた。

                    ベッドの脇に下げている尿バッグの栓を開け、尿をバケツの中に入れている背中は、

                    私の答えを待っている感じだった。

                    「山田さんも休まれた方が良いと思いますよと、そう言うつもりで言いました。語尾を濁したのは・・・・・・」

                    山田さんは、バケツの中に尿を入れ終わっているのに、まだ、じっと待っている。

                    「それは私の曖昧な思い込みで、山田さんに取って、

                     良いのかどうかわからないという事に、途中で気づきました。山田さんの望んでいることは、分からないのに」

                    山田さんは、尿が入っているバケツを持ち、立ち上がった。

                    「そうだったのね。ありがとう。でも、良いの。これが、私の幸せなの」

                    山田さんは、凛とした態度の中に、可憐な女性の表情を浮かばせた。

                    「人の思いがわからないのに曖昧な言葉はただの思い込みに過ぎない」

                    「はい」

                    私は返す言葉もなく納得した。

                    「ねぇ。翔太」

                    山田さんは、愛らしさと憂いが入り混じった様な女らしい艶を漂わせながら、翔ちゃんに微笑んだ。

                    この時間は、山田さんにとって唯一翔ちゃんを独占できる時間。

                    その時間があっても良いと思う。

                    私はこれ以上、この場にいてはいけない気がした。

                    私は小さい声で、お邪魔しましたと頭を下げたまま、静かに翔ちゃんの部屋のドアを閉めた。

                     

                     翌日、翔ちゃんのネブライザーを、適宜行って良いという指示を貰う為に、

                    早川先生へ電話をかけた。

                     主治医への報告の際、利用者にとって必要な指示を貰える様な情報とその必要性を強調した

                    報告して報告をする。

                    早川先生は、ネブライザーを、適宜行って良いという指示を出してくれた。

                     

                     その後、言葉を濁しながら、「チョコありがとう」と小さな声で照れ臭そうな声が聞こえてきた。

                    一瞬、何の事だか分からず、エッ?と聞き返した。

                    「お礼はちゃんとするから」

                    「いいえ、お礼なんて、とんでも無いです」

                    (だって、私は、早川君にチョコなんて渡していないんだから。)と言おうとして飲み込んだ。

                     

                    あっ、そう言えば・・・・・・やられた。

                    あの時、早川君のお母さんが、これはトックンの分ねとか言っていた。

                    まぁ〜、良いか!私が渡した訳でもない。

                    早川君のお母さんが渡したものだし、浩太の残りのチョコだったんだから。

                    気にしないで、スルーしよう。

                     

                     それにしても、早川君のお母さんは、面白い。

                    あの天然振りが堪らない。

                     

                     浩太は、折角作ったチョコを一口食べた後、苦そうな顔をして、舌をベロンと出した。

                    私と舞も食べてみた。

                    「ニガッ!これはムリでしょう。大人の味

                    浩太の嫌そうな顔を見て、2人で笑い転げた。

                    一生懸命口の中に残っているチョコレートを、茶色いよだれを垂らしながら、

                    ベロを指で擦りながら、掻き出していた。

                     

                     

                     翌日、浩太を送って行った時、早川君のお母さんに、

                    「ちょっと苦かったみたいでした」と浩太の感想を伝えた。

                    「じゃあ来年は、栗きんとんにしましょう」

                    「エッ?どうして、バレンタインデーに栗きんとんなんですか?」

                    「あら!だって栗きんとんは、浩太君の好物なのよ」

                    「ハハハハッハハッ」

                    そんな突拍子もない事を、真顔を喋っている早川君のお母さんが面白くて、

                    私は涙が出る程、お腹を抱えて笑った。

                    早川君のお母さんのこの天然ツボがたまらない。

                     

                    それを見て、浩太も早川君のお母さんも笑っていた。

                    「今日は、お雛様を出さなきゃならないのよ。忙しいわ」

                    「でしたら、今日は休みなので、暇ですから、私が浩太をみます」

                    「あら、お暇なの?丁度良かったわ。手伝って頂戴。お雛飾り出すの大変なんだから」

                    ・・・・・・確かに暇だけど。

                    暇だと言ってしまったから、断る言い訳がみつjからない。

                    「アッ、ハイ。お手伝いさせてください」

                    (なんでこうなるんだろう。不思議な感じ)

                    「浩太君を送り届けた後、一緒にランチをして、それからお雛飾りを出しましょうね」

                    とニコニコ満足気な顔をして玄関のドアを閉めた。

                     

                     私は一旦翔ちゃんの家に戻り、溜まっていた掃除を片付けていたら、

                    お昼頃になり、浩太が午前中の早川邸での保育を終え、

                    早川君のお母さんに送られて帰ってきた。

                     

                     私は早川君のお母さんの車で早川邸へ向かった。

                    車の中も バラの香りがした。

                     

                     この香りが私には心地よく、早川君のお母さんの印象をよくしてくれた。

                    香りは人と接する時のマナーとして必要な要素かもしれない。

                    強い香りは不快感として残るが、ばらの香りは女性の彩の一つかもしれない。

                     

                     

                     私の家には、雛人形が無い。桃の節句もなかった。

                    沙希の家に飾っていた雛人形を、別に欲しいとは思わなかった。

                    他の人形にも興味が無かった。

                     

                     だけど、早川君のお母さんと飾った雛人形のお内裏様の2人の顔は、

                    とても綺麗で、桃の花が似合っていた。

                    雛飾りの雪洞の灯りが、雛祭りを艶やかに照らし、官女たちはそれを祝っている。

                    なんて優雅なんだろう。

                     

                     雪洞の灯りが 丸いから 内裏雛の凛とした表情を、 

                    穏やかな気品として映し出し 私達にそう思わせる様に見せている。

                    灯りは、丸い方が良い。

                     

                    手と手をつなぎ合わせた丸い円は、安らぎを与えてくれる。

                     

                    私は、ひな壇の前に座り、しみじみそれを感じた。

                    そして、日本の女性である事を誇りに思った。

                     

                     ひな壇飾りは、夜遅くまでかかり、早川君も手伝ってくれて、その後、翔ちゃんの家まで、

                    送ってくれた。

                    翌日も同じように、暇を宣告した私は、ひな壇飾りを、早川邸で行なった。

                     

                     そして、桃の節句の日、雛祭りを祝う食事に招いてもらった。

                    その日、どういう話の流れで、そうなったのかは覚えていないけれど、

                    私は日曜日、早川邸で、全く興味がない、茶道と華道と着付けを、習う事になってしまった。

                    「これは女性としてのマナーです」

                    確かに、マナーですが・・・・・・。

                    「着付けを習っても着物なんて、着ることはないと思うんですけど」

                    「着物の畳み方、着物のお手入れ、知らないより、知っている方が素敵だわ」

                    「確かにそうですね」

                    「日本人の文化は残しておきたいじゃない」

                    「だから、お庭に竹なんですね」

                    「良いでしょう。あの竹の下に、苔を生やしている所なの」

                    「はい。良いですね。何だかとても、癒されます」

                    「それは嬉しいわ。じゃあ、来週夕食を用意するわ」

                    「来週ですか?」

                    どうして日本文化から、食事を食べることとに結びつくんだろう。

                    さっぱり、分からない。

                    しかも、また。来週もここで過ごす事になる。

                    「嫌いな物はあるの?」

                    「ありません」

                    「良かったわ。和食と洋食どちらがお好き?」

                    「和食です」

                    「そう。何にしようかしら迷うわ」

                    「食事のメニューって悩みますよね。私も買い物へ行ってから、決めてる事が多いいです」

                    「じゃあ、一緒に作りましょう。お買い物も一緒に行ってね。そうすれば悩まないわ」

                    「・・・・・・はい」

                    私は、イヤと言えない性格ではないのに、どうして断れないんだろう。

                    浩太がお世話になっているからだろうか。

                    「楽しいわ。娘が出来たみたいで。トックンはつまらないわ。やっぱり娘が良いわね」

                    「でも、早川先生はとてもお優しい方です」

                    「そう?嬉しいわ。だったら、あの子も一緒に、付き合わせましょう。偶には親孝行して貰わないと」

                    返答に困り、笑って誤魔化した。

                    「こうやっていると、貴方も直ぐに忘れるわよ。心の中に置き去りにしている忘れ物を」

                    そういう事なんだ。

                    これは・・・・・・この人の思いやりなんだ。

                    「そうですね。ありがとうございます」

                    この人に、カーネーションをあげたい。

                    私が一度も送った事がなかった母の日に送るカーネーション。

                    嘸かし喜んでくれる事だろう。

                     

                     早川邸の庭に咲く薄ピンク色のウグイスカグラが、

                              春の訪れを知らせてくれていた。

                     

                    ねぇ、沙希。

                     

                    お雛祭りって、楽しいんだね。

                    昔は、「子供の遊び」から始まったみたい。

                    お内裏様とお雛様ではなくて、2人対で、内裏雛って呼ぶんだって。

                    知らなかった。

                    女の子のお祭りをしてもらった事が、とっても嬉しかった。

                     

                    人は一人で生きていけると 意気がっても

                    一人では 生きていけない。

                     

                    心が折れそうな時 それを支える 物あれば

                     

                    泣き悲しみを   素直に出せる 者となり

                     

                    泣くことさえも 忘れ去る。

                     

                    悲しいときは 泣いて感情をコントロールすることも大切。

                     

                    だけど、切ない感情に 自分を いつまでも 浸らせてばかりいても

                    虚しいだけ。

                     

                    笑いながら 素直に 生きたい。

                     

                    穏やかに 静かに 過ごせる此処は 

                    居心地が良い。

                     

                    雛人形の唇に 唇を重ねたなら ほのかに バラの香りがしそうな

                    女になるのも 良いかもね。

                     

                    おやすみ 沙希。

                     

                     

                     

                    辛いって言えないのが、ツラいよな  最終章  15 バラの香りに 包まれて

                    2018.05.26 Saturday 06:50
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                       最終章 14 続編  バラの香りに 包まれて

                       

                       私は、早川邸から訪問看護ステーションへ着く頃には、

                      傷を癒して貰ったからなのか、ただの仕事人間だからなのか、

                      母の存在を知ったからなのか、自分の居場所を見つけたからなのか、

                      訪問看護ステーションの管理者、立花 彩香になっていた。

                       

                       仕事に追われ、難なく夕方の帰宅時間になった。

                      私は、明日から有給になっている。

                      だけど、もう休みを取る・・・・・・その必要性もなくなってしまった。

                       

                      明日の休みは、返上しようかと思ったけど、今更、どうしてその必要性がなくなったのかを、

                      他のスタッフから、色々聞かれるのも、面倒くさい。

                       たまには良いだろう。

                      こんなノープランも。

                      それに、結構仕事中、失った大切な物の存在が余りにも大き過ぎて、

                      大きな影が私を暗く追い込もうとしている。

                      それを跳ね除けて消し去り、平然としているのが、実は結構シンドイ。

                       

                       他のスタッフに、「明日から宜しくお願いします」とだけ言って、車に乗った。

                      朝降っていた雪は、もう降ることも許してくれない。

                      優との思い出が深い白い雪。

                       

                       神様は私に、雪さえも与えてくれないのだと、フッと笑えた。

                      もし、雪が積もっていたなら、私の心の中にも、思い出と悲しみが、積もっていた気がした。

                       

                       今朝、早川君のお母さんから、「仕事が終わったら来るように」と言われていたので、

                      翔ちゃんの家へ戻らず、早川邸へ車を走らせた。

                       

                       翔ちゃんと舞には、優のことはまだ言えない。

                      必要以上の心配を、翔ちゃんにさせるのはご法度。

                      精神状態は、呼吸状態と関連性が高いから言えない。

                      翔ちゃんに ツラい話を背負わせるのは出来ない。

                      翔ちゃんは もっと辛いのに、ツラいって言う言葉。

                      それを言えない。

                       

                       道路や訪問看護ステーションの近くに、雪が降っていた跡さえないのに、

                      早川邸の竹の間には、雪が残っていた。

                      それが、風に吹かれながら、サラサラと飛ばされていた。

                      早川邸の駐車場にあるオレンジ色の灯りが、それを、キラキラした光のように映し出している。

                       

                      ・・・・・・綺麗。

                       

                       思わず見とれて、その光を追った。

                      キラキラした雪は、風に吹かれて、スゥーと暗い地面へ、ヒラヒラ舞うように落ちて行った。

                      キラキラしていた雪は、見えなくなり、キラキラした光が消えてしまった。

                      「もう雪を追うのはやめなさい」とでも言われている気がした。

                       

                       終わりを駄目押しされた気がしてきた。

                      (分かっているわよ)

                      そう思いながらも、なんだか切なくなり、

                      welcomeで待ち構えてくれている外灯に照らされた明るい玄関の方へ向かった。

                      なんだか恥ずかしい気もするなぁ。

                      今朝、何となく自分のことしか見えていなかったから、失礼はなかったかなぁ。

                      玄関チャイムのボタンを押そうか帰ろうか迷い、

                      人差し指がチャイムに着くか着かない程度で暫く止めたままでいた。

                       

                       それにしても、いつも思っていたことだけど、ここの玄関チャイムは変わっている。

                      鳩時計の鳩が出てくる所に、インターフォン付きの玄関チャイムが設置されている。

                      何か意味でもあるのだろうか。

                      家の中から「綾さんは仕事がまだ終わっていないのかしら?緊急かしら?来てくれるわよねぇ」

                      早川君のお母さんの燥ぐ声が聞こえてきた。

                      (待っていてくれている。しかも楽しそうに)

                       

                      私は、鳩時計の中にある玄関チャイムに向かって、人差し指を勢いよく突きつけた。

                       

                       玄関のインターフォンから、「ハイハイ、どうぞ」と早川君のお母さんの声がした。

                      あんなに今朝、惨めな姿を見せたのに、いつもと変わらない声を聞いて、

                      どうしてだか、ホッと安心した。

                      「あらあら、寒かったわよね。中にお入りなさい。どうぞ」

                      「はい。お邪魔します」

                      いつもなら、こんな時、玄関先で、今朝のお詫びを言って直ぐに帰る。

                      それなのに、靴を揃えて、案内されるがまま、早川君のお母さんについて行った。

                      断る理由がない。

                      今は ここに 居たいから。

                       

                       今朝は、バラの香りがしたのに、家の突き当たりから、ラベンダーの香りが漂っていた。

                      私は香りのする方へ、視線を向けた。

                      「アッ、そこがトイレね。おトイレは大丈夫?」

                      「はい。大丈夫です」

                      トイレの心配までしてくれるなんて、子供じゃあるまいし。

                      でも、それが嬉しく思え笑った。

                      「夕食を一緒に食べてね。それから、浩太君のチョコを一緒に作りましょう」

                      「あのぅ、でも、私が一応翔ちゃんの家の食事当番なので」

                      「あらっ!大丈夫よ。浩太君を送って行った時に、舞ちゃんに言っておいたから」

                      「えっ?そうなんですか。すみません」

                      「私が作った物は、美味しくないかもしれないけど。あら、もしかしたら食べたくない?」

                      「いいえ、食べたいです」

                      「そう?良かったわ。これ運んでね」

                      「はい」

                      ・・・・・・さすが、山田さんと30年の付き合いがあるはずだ。

                      このペース、似ている。

                       ”人にこう言わせる話術 ”を知っている。

                      「アッ、その前に、手を洗っても良いですか?」

                      「そんな事遠慮なさらずに、どうぞ。それから、これね。お洋服が汚れたら大変だから」

                      私は、濃いグリーンの胸元に、ダーツが入っている変わったデザインのエプロンを渡された。

                      「これ、可愛いですね。素敵です」

                      「そうでしょう。それは私のお気に入りなのよ」

                      「そうなんですね。ありがとうございます」

                      「早く手を洗ってきて、準備しなきゃ、トックンが帰って来るわ」

                      「トックンですか。ハハッハハハッ」

                      「あら、可笑しい?可笑しいでしょ。全く恥ずかしいわねぇ。もう大人なのにねぇ」

                      「いいえ、良いと思います」

                      「そう?じゃあ、綾さんもトックンって言ってみたら?」

                      「えっ、それは無理です。早川君は先生なので」

                      「あの子は、お役に立っているのかしら?ご迷惑をお掛けしていないかしら?」

                      「早川君は優秀な医者です」

                      私は、お母さんから、背中をバシッと叩かれた。

                      (痛っ!)

                      お母さんは嬉しそうに笑いながら、

                      「それは、嬉しいことを。ありがとうございます。美味しいデザートも付けるわね」

                      私は、幼い頃、毎日母親から、酷く攻撃的な事をされてきたおかげで、

                      他の人よりも、自己防衛機能が優れているのか、攻撃的な人は、直ぐに察知できる。

                       

                       多分、他の人よりも、天性な物だけど、5感が敏感に反応する。

                      今朝私は、早川君のお母さんに対して、安心できる人だと認識していた。

                       

                       お洒落なエプロンをつけて、食事の準備をしていたら、早川君が帰って来た。

                      「玄関の鍵が開いたままだったよ。全く不用心だなぁ」

                      「アッ!それ私です。すみません。お邪魔しています」

                      「あら、良いのよ。そんな事気にしないで。他人行儀な」

                      (・・・・・・いヽえ、他人です)と心の中で呟いた。

                      お母さんが言った”他人行儀な”という言葉のニュアンスと、声のトーンが、

                      心地よく、親しみ深く、癒すような感じで、私の耳に伝わってきた。

                       

                      家族でも無いのに、家族みたいな事を言って・・・・・・くれた。

                       ” あなたは 一人じゃないのよ。私がここにいるから ”

                      そう思ってくれている気がした。

                       

                       早川君は、照れ臭そうな顔をして、洗面所で手洗いをしてから、

                      同じリズムで静かに10段位ある階段を上がり、

                      普段着に着替えてから、登った時と同じリズムで階段を降りて、リビングに座った。

                      私がきていることに対して、特に動揺も気持ちの変化もなさそうで安心した。

                      変に意識されると居心地が悪い。

                      こんな感じの普通が良い。

                       

                       早川君のお母さんが、トックンと言っているのを聞いて、吹き出して、

                      笑い転げそうになったのを、

                      必死に我慢しながら、夕食を囲んだ。

                       

                       それから、夕食の片付けを終え、浩太用の手作りチョコを、お母さんと一緒に作った。

                      それを見て早川君は、私と目を合わせようとせず、照れ臭そうな顔をして、

                      部屋に居るからと、お母さんに声を掛け、階段をゆっくり登る足音がした。

                      何かを言いたくて 迷っているような足音がする。

                      「明日、お仕事なのに、ごめんなさいね。付き合わせて」

                      早川君の気持ちを知ってか知らずか、マイペースなのか?

                      早川君のお母さんは自分の波長だけしか捉えて居ない感じだった。

                      「いいえ、手作りチョコを作った事が無かったので、嬉しいです」

                      「チョコは嫌いなの?」

                      「いいえ、チョコは好きです。でも、バレンタインにチョコレートを渡した事が無くて」

                      私は、誰にも言った事がない話を、あまり知らない人にしている。

                      それも、理事長の奥様に、

                      しかも、こんなにすんなりと。

                       

                      おかしい。

                      私・・・・・・変だ。

                      「あらっ、それは淋しいわねぇ。でも、良かったわ。はい、これはトックンの分ね」

                      「こんな風に、早川先生にも、毎年作っているんですか?」

                      「そんな事しないわよ。面白い人ね」

                      (いいえ、貴方の方が余程面白いキャラです)と心の中で笑っていた。

                      私は チャップリンが大好きだから、この人のこのキャラは面白くてハマった。

                      「デザート食べるお時間は有る?まだ、お若いから大丈夫よね。でも、ダメかしら」

                      ダメかしらと言われたら、ダメだと言えない。

                      「明日、休みなので、大丈夫です。頂きます」

                      「明日、お休みなの?それを早く言って下されば、心配しなかったのに」

                      「あぁ〜、そうですね。すみません」

                      「嘘よ。冗談。ハハハッハハ。あら?明日、何か用事がお有りなの?どこかへ行かれるの?」

                       

                      「いヽえ・・・・・・もう、終わったんです」

                       

                      私は、他人の事に興味が無い。

                      そして、自分のことに干渉されるのも大嫌い。

                       

                       だから、美容院では話しかけないで下さいと担当の人に頼んでいる程、

                      干渉されるのが大嫌いだ。

                      人はそれぞれに感じることが違う。受け止め方が違う。

                      だから、正しく解釈する人だけとは限らない。

                      勝手に お客様のことを 悪く思い込むかもしれない。

                      よく見てもらいたいとは思わない。

                      ただ真実が伝わらないのが ややこしくて 面倒だ。

                       

                       それなのに、そんな私なのに、私は、この人に、

                      自分の事を聞いて欲しいと、言いたくなっている気さえしている。

                      「たまにはね。ゆっくりお休みなさい」

                      「はい・・・・・・」

                      私は、その後の言葉が浮かばず、洗い場で下を向いたまま、

                      バターがベットリついた容器を、テッシュで拭き取ってから、洗剤で洗った。

                      油分が多いい物を洗う時は、いつもこうしている。

                      スポンジがベトベトになると、後が大変だから。

                       

                      「何かが終わった・・・・・・のね。・・・・・・何かお忘れ物は無い?」

                       

                      早川君のお母さんは、さっきまでのカラカラした感じとは違い、

                      心配そうな顔をして聞いてきた。

                       

                      「エッ?忘れ物ですか?どこにですか?」

                       

                      「ここよ」

                       

                      私は、お母さんから、心臓の上を3回ポンポンと叩かれた。

                       

                      「言い忘れ、伝え忘れ、渡し忘れ、消し忘れ、捨て忘れとか」

                       

                      母性本能が優れている女の勘は鋭い。

                       

                      私は、キッチンに立って居られなくなり、全身の力が抜けて、そのままそこに、

                      しゃがみ込んだ。

                       

                      「・・・・・・忘れ物は、どうしたら良いですか?」

                       

                      「今はまだ、残しておきなさい。そのうち、忘れ物をしていることも忘れるわ」

                       

                      「忘れ物は残しておいて良いんですか?」

                       

                      「残しておきなさい。誰も貴方の思い出の邪魔はしないわ」

                      「まだ現実かどうかさえ分からなくて、忘れ物なら捨てたい気もします」

                      「それは まだ 後でいいのよ。この次誰かを好きになった時に、

                       忘れ物が多くて辛かった事を思い出してくれるわよ。

                       今度は 素直に 正直に 純粋な恋愛をしたいと思うはず。それで良いのよ」

                      「痛みを負ったから、今度は純粋に 素直になろうとする。その時かな忘れ物が消えるのは」

                       

                      この人は、どうして、私の心を攫っていくのだろう。 

                      残っている物を消し去るように。               

                       

                       

                      ねぇ、沙希。

                      これが、お母さんなんだね。                

                       

                      強く居なければならないと思ってきたのに、

                      強く無くても良い。弱い自分を見せても良い。

                      自分の思いを受け止めてくれる。

                       

                      それが、家族なんだね。

                       

                      今宵は、早川君のお母さんと同じ香りがするバラのアロマオイルに包まれて。

                       

                      沙希、おやすみなさい。

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       


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