初恋 島崎藤村

2017.12.18 Monday 06:29
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    島崎藤村「初恋」

    まだあげ初めし前髪の林檎のもとに見えしとき
          

    前にさしたる花櫛(はなぐし)の 花ある君と思ひけり

    やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは  

    薄紅の秋の実に  人こひ初めしはじめなり

    わがこゝろなきためいきのその髪の毛にかゝるとき
      たのしき恋の盃(さかずき)を 君が情(なさけ)に酌(く)みしかな

    林檎畠(りんごばたけ)の樹(こ)の下に  おのづからなる細道は
                 

    誰(た)がふみそめしかたみぞと 問ひたまふこそ こひしけれ

     

     

     

     

    ( 自己流現代訳 )

     幼い頃からいつも会っていた林檎の木に行ってみたら、
     髪を結い上げたばかりの君の姿が見えた。

    昨日まで、幼い女の子だと思っていた君が、

    大人に見えて、心の中が踊るように、ドキッとして、胸がキュンとした。
     

    髪を結い上げた君の前髪には、花櫛を挿していた。

    それを見て僕は、君の全てに、花が咲いたような感じがした。  

     君はしなやかで可憐な白い手を、そっと優しく差し伸べて、

    僕に林檎をくれたね。

    僕はその薄紅色の実の林檎を、

    君の身代わりのように大切に思ったのが、僕の恋の始まりだった。
           
    急に大人びてしまった君に、僕はどう話しかけていいか
    わからなくなった程 自分の心がどこかへ 行ってしまったみたいになったよ。

    恋しい君と顔を合わせるほど傍にいたら、

    僕の口から思わずため息がもれ、吐息が君の前髪にかかった時

    君と愛情を酌み交わしたいと願う思う程、君に酔ってしまったよ。  

    君とこの林檎の木でもう何回会ったことだろう。

    気がついたら、二人が通い続けた証(あかし)に、

    いつのまにか細い道が出来ていたんだね。  

    それなのに、君はわざと僕に聞いてきたね。

    「ねえねえ、誰がこの道をつくったのかしら」って。
    そんないたずらっぽい君が、よけいに僕は愛おしい。

     

    全て 私の自己流解釈です。